ハリウッド映画界の大物プロデューサーによる性的暴行疑惑を追ったジャーナリストが、その困難だった取材プロセスをまとめたノンフィクションだ。被害にあったと噂される女性たちを見つけ出し証言を引き出そうとするものの、スキャンダルを暴かれることを恐れる大物プロデューサーは、イスラエルの諜報機関の元工作員やアメリカの検察OB、大物弁護士らプロ集団を雇って取材を妨害する。 記者たちや被害女性たちを、プロの調査員が尾行して監視するとともに、身辺を探って弱みが見つかれば、それを材料に口封じ工作をするのだ。イスラエル空軍出身の美人スパイが別人になりすまし、監視の対象者に直接会って情報を引き出す。悪いことをした張本人が自己保身のために札束でその道のプロを雇い、真実が暴露されるのを止めようとする。元特殊部隊のプロたちを雇い日本から逃亡したカルロス・ゴーンのような例は、実は世界では珍しくないことが分かる。 本書のタ
11月18日、ポンペオ米国務長官は、40年来の米国の政策を変更、トランプ政権はイスラエルによる西岸への入植を非合法とは考えない旨発表した。ポンペオは発表の中で、「オバマ政権の入植地問題へのアプローチを転換する」「入植地それ自体は国際法に不整合なものではない」「第一に法的問題は個々の事例により決まる」「第二に西岸の最終的地位はイスラエルとパレスチナが交渉すべきものだ」「第三に今回の決定は世界の他の地域での事例に関する法的問題に影響を与えるものではない」「紛争を法的に解決することは出来ず、それはイスラエルとパレスチナの交渉によってのみ解決される政治問題だ。米国は引き続き和平交渉を支援する」等と述べた。 今回の米国の決定は、国際法、国連決議、国際社会が取ってきた立場に違背すると言ってよい。11月20日には、この問題で安保理が会合した。安保理として入植反対の声明を出すことはできなかったが、多くの理
世界史の劇的な転換点である「ベルリンの壁崩壊」から11月9日で満30年になる。当時は冷戦の終焉(しゅうえん)で平和な時代が訪れる、という期待感が高まったが、今日の世界情勢は大きく暗転している。「なぜ、こうなったのか」。世界情勢の未来を見渡すためには、まずは大きく変転してきた国際秩序の波動を検証することが必要である。以下、この30年の世界情勢をそれぞれ様相が異なる10年(デケッド)ごとに区切って振り返ってみる。 最初の10年間は、ベルリンの壁が崩壊した翌月の1989年12月に開かれたマルタ会談から始まった。そこで米国のブッシュ(父)大統領とソビエト連邦のゴルバチョフ書記長が「冷戦は終わった」と正式に確認した。当時は米国もソ連も和解して手を結び、欧州はECからEUへと統合が進み、もう一つの超大国となるのではないかとみられていた。 また、アジアでは日本が「隆々たる経済大国」として躍進を続けており
世界史の劇的な転換点である「ベルリンの壁崩壊」から11月9日で満30年になる。この間の世界情勢をそれぞれ様相が異なる10年(デケッド)ごとに区切って振り返ってみる。冷戦の終焉直後は「協調型・多極世界」に移行していくと思われていたが、湾岸戦争を機に世界秩序の潮流は、表面的な一極構造の底に潜在的な対立を含んだ「競争型・多極世界」への流れへと変わった。 『世界秩序は「競争的多極化」へ――日本が採るべき進路とは(前編)』 「大いなる挫折」を味わう米国 冷戦終結から2番目の10年間である2000年代を振り返ると、前述のように湾岸戦争の余波としての「米国同時多発テロ」が01年9月11日に起き、21世紀はじめの世界情勢に大きな影響を及ぼした。同年の1月に発足していたブッシュ(子)政権は「テロとの戦い」を掲げ、アフガン戦争、イラク戦争へと突き進んでいった。しかし、いずれも所期の目的を達成できず、「大いなる
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