謡蹟めぐり 鉄輪 かなわ ストーリー 都に住む女が、自分を捨て新妻を迎えた夫の不実を恨み、貴船神社に日参し願を掛けています。今日も社前に進むと、待ち構えていた社人が「頭に鉄輪を頂き、その三本の足に火を灯し、顔に丹を塗り、赤い着物を着て怒る心を持てば鬼となり、恨みを果たせる」と神託があったと告げます。女は、それは人違いだと言いますが、急に顔色が変わり、薄情な夫に思いしらせてやろうと走り去ります。 一方、下京の男は悪い夢見が続くので陰陽師清明に占ってもらいます。すると、女の恨みで今夜にも命が尽きると言われ、急いで祈祷を願います。清明が夫と新妻の人形を作り祈り始めると、間もなく凄まじい空模様の中悪鬼となった女の霊が現れます。そして夫の心変わりを責め新妻の髪を掴み激しく打ちすえなどしますが、守護の神々に追われ、神通力を失い、心を残しながらも退散します。(「宝生の能」平成10年10月号より) 鉄輪