著: トミヤマユキコ 池尻大橋との出会いは、今から10年ほど前にさかのぼる。大叔母から借りていた要町のマンションが、彼女の高齢化にともない売りに出される運びとなり、「ならば三軒茶屋に引越したい!」と思っていたわたしに、中学時代からの友人ゆみちゃんが「うちの親がマンション経営やってて、三軒茶屋の隣町に物件があるんだけど、空きがあるか聞いてあげようか?」と言ってくれたのだった。渋谷から二駅という便利さにもかかわらず都会っぽさがあまりなく(褒めてます)、シブい飲み屋やのんびりとした商店街がある三茶にわたしは憧れていた。 その時点で池尻大橋のイメージは限りなくゼロに近かった。でも、大好きな三茶に歩いて行けるのだから文句はない。結局わたしはほかの物件を一切見ることなくそのマンションに入った。そして数年後、いまのパートナーと付き合い始めると、大家さん=ゆみちゃんパパが「別のマンションの部屋がひとつ空き