可愛い可愛い弟の利比古がマンションに来てくれた。 アツマくんはもちろん仕事場に行っている。 独り占め。 午後1時ちょうどに大学からマンションの部屋に帰り、利比古がインターホンを鳴らすのを待っていた。 現在、午後2時53分。 薄い黄緑色のエプロンを着て、キッチンを背にして、ダイニングテーブルの席についている利比古と向き合っている。 エプロンを着る必要は本来は無かった。お菓子を調理して食べさせてあげるワケでは無かったから。でも、家庭的な雰囲気を身にまといたくて、敢えてエプロンを装着した。 家庭的な雰囲気に加え、エプロンの薄い黄緑色が醸し出す清涼感が、利比古に良い印象を与えているはず。 ニコニコ笑顔を絶やさないように努めつつ、 「どう、利比古? 用意しておいたシュークリームが、コーヒーと絶妙に合うでしょ」 と言ってみる。 「美味しいよ。シュークリーム、甘いけど、クドくない」 そうでしょそうでしょ