明治時代は、みんなが「日本で漢字って本当に必要なのか?」という素朴な疑問に気付かされてしまった時代だ。 新しい技術や文化の襲来によって、漢字が厄介者扱いされていた時代があった。未来の漢字の姿をどのようにすべきかを本気で考え、不可侵の領域である字体まで踏みこんだ人々がいた。そんな方々が残した書籍(以下、造字沼ブック)を読み、臨書し、その想いを味わう連載です。今回6冊目。 およそ100年前の明治37年、「東亜新字」と名付けられた書籍が発行された。 この本は、新しい時代に必要な、新しい漢字の形を提案している文献だ。著者は明治を代表する書家。また実業家でもあり、数多くの出版物を通じて生涯にわたり漢学・書の発展につとめた前田黙鳳氏によるものだ。 書体見本 まずはどんな字であるかを見てもらいたい。文字見本が手書きであるため、前回同様に源ノ明朝のエレメントで再現した。 明朝体だといまいち違いがわかりにく