「日本トップの病院」で心臓手術を受けた患者が亡くなった。事故調査を求める遺族に対し、病院側は1年半以上にわたって拒み続けていた。「患者中心の医療の理念に反する」。学会の重鎮が論文で公然と批判する事態になってようやく、病院は第三者機関に報告し、真相解明に向けて動き出している。 ●「患者中心を無視」 2020年12月10日、東京都内の70代男性が国立国際医療研究センター(NCGM、新宿区)で手術を受けた。遺族によると、男性は心臓内で血液の逆流を防ぐ弁がきちんと閉じない「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」だった。 手術記録などによると、執刀医は右胸を小さく開いて内視鏡などを入れて操作する「低侵襲心臓手術(MICS)」という方法で、僧帽弁の修復を試みた。うまくいかず、人工弁に置き換える方法に変更。手術の時間が5時間に迫る中、心筋梗塞(こうそく)を起こした。男性は大学病院へ搬送され