ヨーロッパにはノマド(遊牧民)の長い歴史がある。しかし1990年代には、この大陸をまたにかける新しい流浪の民が登場した。彼らはテクノトラベラーズ・トライブ(ちなみにこの〈テクノ〉のスペルは〈Techno〉ではなく〈Tekno〉)を自称し、落書きだらけのバスにサウンドシステムを詰め込み、自分たちもスシ詰め状態で乗り込んだ。そして古いトラックや機材を収集し、人里離れた場所でレイヴを開催。それは自由を祝うための政治活動だった。参加者の共通点はTeknoへの愛。Teknoとは、大都市の賑わうクラブから離れた場所で行う、入場料無料、ルール無用のフリーパーティシーンで誕生した、ジャングル、レイヴ、テクノ、ハードコアが融合した音楽ジャンルだ。 このムーブメントが始まった頃、フォトグラファーのトム・アニレーは故郷である南フランスのニースでパーティに興じるティーンエイジャーだった。友人や知人を通して数々のテ