2011年3月、東日本大震災と津波、そして東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下福島第一原発事故)のニュースは、世界中を駆け巡った。しかし、とりわけ原発事故後の福島については、インターネット上をはじめとする大小さまざまなメディアで情報が錯綜し、日本国内にいてさえも、正しい情報を見分けるのは難しかった。フィクションやアート作品の中には、福島の実態を誤解させるような、おどろおどろしい描写を含んでいるものもあった。 そんな中、映画「スレッショルド:福島のつぶやき」が公開された。2013年から2014年にかけて撮影された本作では、激しいスローガンや政治的主張はなく、美しく優しい音楽と共に、福島の暮らしが淡々とつづられる。 監督・脚本を手掛け、自らカメラを回したのは、アメリカのミシガン州在住の椎木透子さんである。その後、椎木さんは、「つなぐひと」「この空を越えて」「この山道をゆく」と、東日本大震災