※ このnoteは「REKIHAKU 特集:いまこそ東アジア交流史」(2021年2月刊行)に掲載された特集記事の転載です。 残された一枚の画幅「愛媛県越智郡魚島村韓国出漁之状況」 東西に長い瀬戸内海の中央、燧灘(ひうちなだ)の真ん中に浮かぶ島、魚島(うおしま)。島の面積は一・三七平方キロメートル、周囲は六・五キロメートル。愛媛県越智郡上島町に属する小さな島である。 魚島の港と集落(2018年撮影) 漁業の盛んなこの島には、漁船団の出航の様子を描いた、一枚の画幅が残されている。一九〇七(明治四〇)年に描かれた「愛媛県越智郡魚島村韓国出漁之状況」である。地形や集落の配置から見て、魚島を北側から俯瞰した絵であり、画題の通り、韓国(大韓帝国)、すなわち朝鮮への出漁の様子を描いたものである。 「愛媛県越智郡魚島村韓国出漁之状況」(複製、原品1907年、歴博蔵) 少し細かく絵を見ていこう。画面の上半分