老い・肉体という牢獄(前編) 「生きる意味、なかった気がする」 竹崎法子 さん 現在、日本には寝たきり、認知症、虚弱など、介護の必要な高齢者が450万人を数える。これは10年前と比べ2倍の数という。 テレビでもよく介護問題が特集されるが、介護する側にも、される側にも、見落とされている点があることを、老人福祉に携わる親鸞学徒は指摘する。 「毎日、山ばっかり見ているのよ」 その80代のA婦人は、遠い目をしてポツリと言った。 10年前、脳梗塞で倒れて以来、右半身が動かない。テーブル炬燵のリクライニング付きの椅子に座り、終日、窓の外を眺めている。 同じ姿勢のままでは床擦れに似た症状が起きるため、1時間置きに部屋の中を壁伝いに歩く。一人では外へ出られない。 鎖につながれたのでもない、厳しい規律があるのでもない。 だが老いは、自身を肉体という〝牢獄〟に閉じ込める。 夫に5年前に先だたれ、心安い友達も皆