日本の土木史に残る黒部川第四発電所(通称、黒四)の建設工事――。 北アルプスの難攻不落の断層破砕帯を資材運搬用のトンネルで突破し、黒部峡谷にダムを築く。戦後の電力不足に悩む近畿地方の経済復興を支えたその偉業は、1964年に「黒部の太陽」として小説化。以降、同名の映画や演劇、テレビドラマなどで繰り返し描かれてきた。 黒四の建設は土木史のみならず、昭和の社会経済史を彩る金字塔の1つになっている。 黒部ダム。黒部川第四発電所の建設工事では、黒部峡谷のダム建設地へ資材を運ぶために北アルプスを貫くトンネル工事を計画。掘削中に断層破砕帯に遭遇し、日本の土木史に残る難工事となった(写真:安川 千秋) それから、およそ60年。この令和の時代に、日本の土木界が再び破砕帯との闘いに挑む可能性が高まってきた。JR東海が進めるリニア中央新幹線の建設がそれだ。 東京・品川と名古屋を結ぶリニアの建設は、付近に複数の活