河原林健一氏の日本学士院学術奨励賞受賞に寄せて 徳山 豪 東北大学大学院情報科学研究科 河原林氏の日本学士院学術奨励賞(併せて日本学術振興会賞)受賞は非常に喜ばしいこと であり,また,彼はそれにふさわしい研究者であると確信している. 河原林氏は,離散数学とその理論計算機科学への応用に関して,現在世界でも最高峰の若 手研究者である.特に,彼が提唱しているアルゴリズム的グラフマイナー理論(Algorithmic Graph Minor Theory)は世界を席巻している.この分野は数学会の会員諸氏にはあまりな じみがないかもしれないので,その意義や業績についてお話ししたいと思う. 河原林氏は慶応大学の博士課程でグラフ理論を学び, 1 年間で博士の学位を 2001 年に取得 した.その時の研究対象はグラフの部分構造に関するもので,特に,ハミルトン閉路の存在 条件に関するロヴァース・ウッドウォール