喧嘩と褒め殺し 腕に自信のある若い剣士同士が知り合って、 「お噂はかねがね聞いておりました。一度お手合わせをお願いしたい」 「望むところです」 となって、道場や河原などで一戦交えたりするシーンを、映画で時々見る。 そこで結構互角のいい勝負が繰り広げられ、ようやく一番終わって双方息を弾ませ額の汗を拭いながら、 「なかなかやりますね」 「そちらこそ。おみそれしました」 と互いの健闘を讃え合う。 そして二人は友人となるのである。 闘って友達になる。男だけに許された特権だ。 私はこれがうらやましい。女にこういうことは滅多にないのではないか。 オシャレに定評のあるナントカ小町が二人出会って、正々堂々と 「お噂はかねがね聞いておりました。一度お手合わせをお願いしたい」 「望むところです」 となるだろうか。 「あら、あの柄はもう流行遅れなのに」 「なにあの下品な着こなし。田舎者ね」 と心の中で呟きながら