企業の開発努力,営業努力のたまものである技術上の機密情報や顧客データは,「営業秘密」として法律で保護される。企業情報システム構築に当たっては,ユーザー企業の営業秘密の取り扱いに十分に注意しなければならない。 美術工芸品の通信販売会社であるA社は,同社の商品を購入したことのある顧客の住所,氏名,電話番号,購入履歴,顧客コード,商品コードなどを顧客データベースとして管理していた。 このデータベースにアクセスするには,毎月更新するパスワードが必要で,しかも各部門ごとに必要最小限のデータしかディスプレイには表示されないようになっていた。印刷する際は,役員の承認を得たうえで情報管理室の担当者に依頼して出力してもらい,閲覧後はシュレッダーで処分するか錠がかかった保管室に保存しておく決まりだった。 この顧客データベースを,A社の商品企画開発部門次長だった人物が競合他社に売却した。この人物は,A社の社員だ