●福嶋亮大さんエッセイ 「『神話が考える』を読むための32冊」 今年3月に、『神話が考える――ネットワーク社会の文化論』(青土社)という本を上梓しました。その目的は、一言で言えば、今の日本に存在するポップカルチャーに、何らかの思想的な表現を与えるということにありました。すなわち、ニコニコ動画から『∀ガンダム』、マーケティング理論から村上春樹、東方プロジェクトから『不思議の国のアリス』までを貫いている感性に、何か言葉を与えたかったのです。そして、そこで僕が選んだのは「神話」という言葉=コンセプトでした。 批評というと、これまでは、イデオロギーに対する「批判」や「切断」をやる営みだということになっていました。けれども、そういう態度は、今は強い支持を得ることができません。それに、そもそも日本の批評の歴史をたどれば、決して批判≒切断ばかりやっていたわけではないことが分かります。たとえば、18世