英語独習法 (岩波新書 新赤版 1860) 作者:今井 むつみ発売日: 2020/12/19メディア: 新書この『英語独習法』は、認知科学や発達心理学を専門とする今井むつみによる、認知科学の観点から考えた最強の英語学習について書かれた一冊である。『「わかりやすく教えれば、教えた内容が学び手の脳に移植されて定着する」という考えは幻想であることは認知心理学の常識なのである。』といったり、多読がそこまで良くはない理由を解説したり、一般的に良しとされる学習法から離れたやり方を語っている。 特徴としては、「何が合理的な学習方法なのか」を披露するだけではなく、「なぜそれが合理的なのか」という根拠を説明しているところにある。だから、これを読んだらなぜ一般的な英単語の学習法(たとえば、英単語と日本語の意味を両方セットで暗記していく)が成果を上げないのか、その理屈がわかるはずだ。認知科学のバックボーンから出
この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた 作者: ルイスダートネル,Lewis Dartnell,東郷えりか出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/06/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る先週末HONZに文明が一旦崩壊したあと、いかにして文明をリスタートさせるのかをテーマにして書かれた『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』の記事を書いたらこれがけっこう読まれていたみたいだ。honz.jp アクセス数とかはわからないけど※この記事を書いた後でアクセス数を見れるようにしてもらえました。 なんかブックマークコメントやTwitterの言及がいっぱいついていた(Twitterの方はみてないけど)。やれ異世界転生物で使えそうだとか、SFでこんなものがあるとか。僕もこの記事を書きながら自分のブログだったらSFへの言及がマシマシになって収拾がつかなくなって
闇の脳科学 「完全な人間」をつくる (文春e-book) 作者:ローン・フランク,仲野 徹・解説発売日: 2020/10/14メディア: Kindle版闇の脳科学ってどゆこと? 闇の脳科学があるってことは光の脳科学もあるのか? とか「完全な人間」ってなんだ?? 中田敦彦か?? とかいろいろ思いながら開いて読み始めた本だけれどもいやはやこれがめちゃくちゃおもしろい!! 邦題だけじゃなんのこっちゃわからないと思うが(原題を訳すと『プレジャーショック──脳深部刺激療法の始まりと忘れ去られたその考案者』)、本書は脳に直接電気刺激を与えることによって、うつや統合失調症、同性愛など様々な病気・症状を治療しようとし、数々の人体治療に手を出し、世間や学者らから批判を食らって忘れ去られていったロバート・ガルブレイス・ヒースという科学者の人生とその研究成果。また、こうした脳に刺激を与えることで病気の症状を治療
軌道学園都市フロンテラ〈上〉 (創元SF文庫) 作者: ジョーン・スロンチェフスキ,加藤直之,金子浩出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/06/29メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る軌道学園都市フロンテラ〈下〉 (創元SF文庫) 作者: ジョーン・スロンチェフスキ,加藤直之,金子浩出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2015/06/29メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る書名にもある通り炭疽菌ケーブルで地球とつながった軌道学園都市フロンテラで繰り広げられるSF版ハリーポーッターとでもいうような恋愛模様に謎の未来スポーツ(無重力スポーツ。主人公の女の子は当然エース)、アリストテレスを主体とした政治学に選挙、全身義体の少女に、放っておくと国家機密にさえアクセスしかねない強迫性のハッカー、それに地球外生命体とのファースト・コンタクト──。 あ
ムレイワガネグモの1種Stegodyphus dumicolaのメスは、子グモに自分の体を食べさせることで知られる。(解説は英語です) 母の愛は海よりも深い。 大家族で暮らすあるクモは、母親が自分の体を子どもに食べさせることで知られているが、このほど、独身のメスたちも同じ行動をとることが研究により明らかになった。(参考記事:「【動画】子を襲われた母ネズミがヘビを猛攻撃」) そのクモは、南アフリカ共和国に生息するムレイワガネグモの1種Stegodyphus dumicola。大家族を形成し、巣を共有するだけでなく育児も共同で行う。 メスはオスに比べて成熟が遅いため、繁殖可能な状態のメスは全体の約40%だけで、それ以外の独身のメスは姉妹の子の世話をすることになる。その献身ぶりは、私たちの想像をはるかに超えている。(参考記事:「【動画】子グマ2頭を乗せて泳ぐ母グマ、貴重映像」)
宇宙・肉体・悪魔【新版】――理性的精神の敵について 作者:J・D・バナール発売日: 2020/07/17メディア: 単行本この『『宇宙・肉体・悪魔──理性的精神の敵について』』は、X線結晶構造解析のパイオニアであり分子生物学の礎を築いたと言われるJ・D・バナールによる、1929年に刊行された人類の未来について書かれた一冊である。原著が100年近く前であり、過去にみすずで刊行されたのも1972年と、言ってしまえば非常に古臭い本である。 僕も今回みすずから新版が出るということではじめて読んだのだけれども、いやはやこれには心底驚かされた。バナールが本書で論じたのは、今の我々が暮らす時代よりもさらに先、科学がさらに発展した状況のことであり、人間が身体を機械化し場合によっては宇宙に植民地を広げていくような時にいったい人類にいったい何が起こるのか、という未来のことなのである。そして、その論、そのヴィジ
ニュートロニウムを取り出して肉眼で見ると一体どのように見えるのでしょうか? 閲覧ありがとうございます。 中学生の頃、ラリー・ニーブンというSF作家の書いたノウンスペースシリーズと言う一連の作品中に中性子星の核を構成しているニュートロニウムの塊が銀色の球状物体として表現されていたのをふと思い出しました。 ニュートロニウムで覆われている物体は内部をスキャンできないとか、大きな塊に宇宙船が近づくと潮汐力で宇宙船が壊れるとか面白いなぁという印象はありました。(確か”There is a Tide”というタイトルの作品だったような。) スタートレックなど他のSF作品でもいくつか登場してくるようなのですが、そこではどのように描写されていたのかはわかりません。 少しググってみると一口にニュートロニウムと言ってもいくつかの種類が考えられているようですが詳しいことはわかりませんでした。 以前化学カテでどなた
SF作家の円城塔先生がこれはすごいと書いていたのを読んで、読んでみた。 脳科学系の本は数多くあるが、僕が読んできた中でも屈指の出来。この本自体で新しい知見があるというわけではないが、ばらばらにちらばった脳に関する実験とその結果の数々を一つ一つ丁寧に説明してくれる。 たとえば顔。人間は相手の顔から驚くほど多くの情報を得ているし、しかも見ることができない自分の顔が、自身の感情にまで影響をあたえることがわかっているという。ペンをくわえてひとこまマンガを読んでもらい、それぞれどの程度面白かったかを得点付けてもらう。ほとんどの被験者がひとこまマンガを面白いと感じたのは笑った表情になるようにペンを加えた時だったという。僕は最近人から「君はいつに半笑いだよね」となかなかショッキングなことを言われたが、半笑いでいることは毎日を楽しく過ごすためにいいことなのだ! においの実験も面白かった。肉を二週間食べ続け
人類進化の謎を解き明かす 作者: ロビン・ダンバー,鍛原多惠子出版社/メーカー: インターシフト発売日: 2016/06/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る考古学者は石器と化石の組み合わせや、発掘地の地質学によって「歴史」を浮き彫りにさせてきた。本書『人類進化の謎を解き明かす』の特徴は、そうした石と骨「だけ」に頼るやり方を捨てているところにある。もちろんまったく援用しないわけではなく、「考古学的記録を新たな目線で見つめること」に重点を置いているのだ。 著者のロビン・ダンバーは人間にとって平均約150人が安定して関係を持てる数であるというダンバー数の定式化を行った人物だが、その来歴を活かすように、本書では人類進化の社会的側面と認知基盤に光を当て人類の進化史を洗いなおしている。僕も専門家ではないからこのアプローチがどれだけ有効なのか疑問に思うが、いくつかの専門的な書評を読む限りで
ミツバチは、自分の巣から現在位置まで目印を何個通過したかを覚えている。(PHOTOGRAPH BY JOE PETERSBURGER, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 自分がリスになったと想像してみよう。そのリスが洞窟を見つけた。中は広々として快適そうだ。だが、2頭の大きなクマが先に入っていくのが見えた。数分後、1頭が出てきた。洞窟は今、自分にとって安全だろうか。これは、多くの動物が日々直面する計算問題だ。 敵を避ける時だけではない。恋人探しや餌探し、移動する時まで、数を理解する能力は様々な問題解決に役立つ。 ドイツ、テュービンゲン大学の神経生物学者アンドレアス・ニーダー氏は、動物の「数える」能力を研究したあらゆる過去の論文を集めて分析した結果、ハチ、鳥、オオカミなど多くの動物たちが、数を理解して、それを基に行動していることを明らかにした。これは、動物なりの数を数える行
僕たちは自分の身体は「わたし」が支配していると感じるが、実はそれは間違いである。正確には行動の大部分は無意識的な行動で支配されていて、意識は行動の最後に現れて「これは自分が決断したことだ」と思い込まされている。僕達が脳について真っ先に学ぶことは、僕たちは自分たちがとる行動にたいして意識はほとんど決定権を持っていないという事実である。 それが『意識は傍観者である』というタイトルによく現れている。これを説明するのにちょうどいい、最近の脳科学本を読むとどこにでも書いてある衝撃的な実験がひとつあるのでご紹介しよう。 被験者の脳に電極をつけて、指を上げるという非常に簡単な動作をしてもらう。そして「指を動かそう」と感じた瞬間を記録する。面白いのはここからで、被験者が「指を動かそう」と意識する一秒以上前に、指を動かそうという脳内活動が生じている。ようするに、脳が「指を動かそう」と指令を出した一秒以上後に
これはけっこう面白い。書名からもわかる通り、脳画像で「嘘をついているかわかります!」とか「購買行動を刺激させる方法がわかります!」とか「中毒症状は脳の疾患だから脳をいじいじすることで治せます!」的なうさんくさい言質の「どこまでが脳で本当にわかること」で「どこからが脳だけじゃわからないこと」なのかをキッチリ決めてくれる良書だ。 否定する為の例を集めたものって、もちろん意義はあるんだけど、読み物としては面白いものになりきらないことが多くてちと不安もあったけれども、杞憂であった。「そんなことまで脳画像で判断できるとしている人達がいるのか」みたいな例を読んでいくだけでも充分に面白く、脳科学として扱える部分と扱えない部分の線を引いて、扱えない部分はどうしたらいいのかみたいなところまで語ってくれるので、脳科学の領域を飛び越えた間口の広い本になっている。 その〈脳科学〉にご用心: 脳画像で心はわかるのか
人間が見ているときとそうでないときで、イヌが表情を変えることが明らかになった。 たとえば、イヌが眉の内側を上げて、目を大きく開き、子イヌのように見せる「悲しげな子犬の顔」をするのは、人間の目を覗き込むときだ。 イヌの表情はこれまで単に感情を示すものと考えられてきたが、もっと柔軟で、人間とのコミュニケーションに役立っている可能性がある。この論文は、10月19日付けのオンライン科学誌「Scientific Reports」に発表された。(参考記事:「犬にも感情がある、MRIで確認」) この発見は、人間の最良の友と言われるイヌをより深く理解する手がかりとなるだろう。人間とイヌはおよそ3万年にわたって共に暮らしてきた。おそらくはその間に、人間の影響を受けつつ、イヌの行動が進化してきたと思われる。(参考記事:「イヌ家畜化の起源は中国、初の全ゲノム比較より」) 過去の研究では、イヌが絶えず人間をじっと
宇宙を満たす太古の光である宇宙マイクロ波背景放射(CMB)には,謎の領域「コールドスポット」が存在する。温度が異常に低い領域だ。コールドスポットの方向に巨大な低密度領域「スーパーボイド」が存在すれば,コールドスポットを説明できる可能性がある。スーパーボイドを通過するCMB光子はいわゆる積分ザックス・ウォルフェ(ISW)効果によってエネルギーを失い,その温度が下がるだろう。このISW効果は宇宙が加速膨張しているために生じる。最近,コールドスポットの方向に差し渡し18億光年のスーパーボイドが発見された。このスーパーボイドがCMBのコールドスポットの原因かどうかを判定するにはもっと多くのデータが必要だ。 再録:別冊日経サイエンス241「巨大ブラックホール 宇宙と銀河の進化を探る」(改題) 【関連動画】The Pigeon, the Antenna and Me: Robert Wilson:宇宙
ヒト族の眉弓を調べるために再現された3Dモデル。英ヨーク大学提供(2018年4月9日提供)。(c)AFP PHOTO / UNIVERSITY OF YORK / Paul O'HIGGINS 【4月10日 AFP】相手を疑って片眉を上げたり、相手に共感して眉根を寄せたりする能力のおかげで、人間は進化上の優位性を獲得した可能性があるとの研究結果が9日、発表された。 研究を行った英国のチームによると、眉の可動性が非常に高いことは、言葉を使わない意思疎通能力を人間にもたらしたとされる。この能力は大規模な社会的ネットワークの構築に不可欠であり、こうした社会を築くことで、人間は協力関係を拡大し、生存確率を高めることができたのだという。 米科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に掲載された論文の共同執筆者で、英ヨーク大学
カメラマンと目が合い、眉を上げる黒のラブラドールレトリバー。(PHOTOGRAPH BY STACY GOLD, NAT GEO IMAGE COLLECTION) イヌが眉頭を上げてみせる表情は「子犬のような目」と形容される。無垢で悲しげに見えるその顔を見れば、クールな人でも心を揺さぶられるだろう。 (参考記事:「イヌが人懐こくなった理由は「難病遺伝子」に」) そんな風に見えるのは偶然ではないことが、新たな研究でわかった。この研究によれば、長い時間をかけてイヌが家畜化する間に、人間に伝わる表情ができるよう、イヌの目の周りの構造が進化したというのだ。(参考記事:「犬にも感情がある、MRIで確認」) 確かに、人間と目が合ったとき、眉頭の筋肉を上にあげて目を大きくみせ、何かを訴えかけるような表情をするイヌは多い。「イヌが眉の筋肉を意図的に動かしているという証拠はありませんが、いかにも“イヌらし
メカジキをはじめとするカジキ類には、剣のように鋭い吻を形作る上顎骨に生じた傷を修復する能力があることが、最新の研究により明らかになった。 Photograph by Brian Skerry / National Geographic メカジキは剣のように鋭い吻(ふん)を持つことで知られる魚だが、最近になってこの吻にまつわる変わった特性が発見された。メカジキが吻を丈夫に保ち、いつでも狩りを行なえる状態にしているというのだ。 研究論文によると、メカジキは特異な方法で骨を修復し、硬く丈夫な状態を維持しているという。 マカジキやメカジキなど、一般にカジキと呼ばれるスズキ目カジキ亜目の魚は上顎骨(嘴骨=しこつ)が前に突き出ていることで知られるが、この骨は獲物を打ちのめし、捕えるのに用いられる。 上顎骨を丈夫に保つには、外から加わる強大な力に耐えるだけでなく、損傷を受けた場合に修復できることが必要だ
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