最近、山陰地方で高校の職員をしている男性とお話しする機会があったが、そのとき、ひとつの質問を受けた。「人権・同和担当教員」という肩書きで仕事をしているその方は、被差別部落出身の生徒たちの進路保障をふくめて、部落差別の問題にとりくんでいる。おなじ立場にある教員たちとも交流しながら仕事をしてきた。ところが最近、この領域にカウンセリングめいた学習や実践がひろがってきて、どう考えてよいのかとまどっている。違和感もあるが捨てがたい気もする。この問題をどう考えるか、という質問だった。 そのカウンセリングめいたものというのは、たとえばセルフ・エスティーム、エンパワーメント、エンカウンター、セルフヘルプグループといった片仮名用語に代表されるという。これらの片仮名はそれぞれ自己尊重、力をつける、内面的に出会う、自助グループといった意味であり、個人の力を重視するアメリカのカウンセリング文化が日本でひろがるなか