昨年末に体調を崩して入院していた祖父が亡くなった。危篤の連絡を受けたとき、僕は仕事で都内にいて急遽駆けつけたが臨終には間に合わなかった。暖かくなるにつれ、体調も安定して、もうすぐ家に戻れると家族みんなで喜んでいた矢先だった。 僕は祖父に伝えるべき言葉を見つけられなかった。日に日に回復しているようにしか見えなかったので、感謝なのか、惜別なのか、わからないけれど僕は祖父に言うチャンスを失ってしまったのだ。尤も百歳という年齢のために手術が出来ず緩やかに死に向かっているのはわかっていた。でも、そんな現実をまえにしても百年続いた命がパッと消えてしまうようなことはないんじゃね?という変な確信があったのだ。 「棺桶にいれるとき釘は打たないでくれ。うるさくてかなわない」「ソンビになって出てこられても困るからさ釘はうつよ。また来るよ。じゃ」こんなどうでもいいやり取りが最後だった。その後、仕事が忙しくなり病院