1.「地方移住の民主化」とZ世代 本連載では第5回と第6回にわたって、イケハヤ氏の移住論を取り上げた。『まだ東京で消耗してるの?』(幻冬舎新書)が出版されたのは2016年。イケハヤ氏が移住先で仕掛けたさまざまな取り組みは現在、その多くが行われておらず、その移住について「失敗だった」と見る向きもある。 しかし、個人の動向にブームは影響されない。全体としての「移住ブーム」はいわく言い難い”熱量”をもって生き延びている。いや、生き延びているというより、むしろ日増しに高まっているとさえいえる。「地方移住」について研究している伊藤将人によれば、図書に限っていえば「地方移住」の語が含まれた書籍は2010年代の中頃から2020年代にかけて急増、新聞記事では1970年代以降から現在まで波を描きつつも右肩上がりで記事が増えているという。 伊藤氏はこうしたことを捉えて、「地方移住ブーム」がほぼ30年の間継続し
