タグ

ブックマーク / mandanatsusin.cocolog-nifty.com (16)

  • アメコミ邦訳は今どうなっているのか:バットマン編 - 漫棚通信ブログ版

    スーパーヒーローものアメリカン・コミックス(以下アメコミと略します)のうち、ヴィレッジブックスから邦訳されてる、ブライアン・マイケル・ベンディス脚によるアベンジャーズを中心とした一連のシリーズがこの四月に完結しました。というか、アメコミには完結がないので、とりあえず一段落しました。 原著でこのあたりが発表されたのが2005年から2010年まで。邦訳開始は2010年で完結が2015年ですから、ちょうど5年遅れですね。 その途中では、スーパーヒーロー同士の内戦はおこるわ、キャプテン・アメリカは死ぬわ、スパイダーマンの過去のエピソードはなかったことになるわ、宇宙人の侵略によってどいつもこいつも宇宙人が化けたヤツだったことが明かされるわ、悪役グリーンゴブリンがアイアンマンになるわ、などのハデでムチャな展開。 物語としては、万能の力を持つセントリーという「統合失調症のスーパーマン」みたいなヒーロー

    アメコミ邦訳は今どうなっているのか:バットマン編 - 漫棚通信ブログ版
  • 『鼻紙写楽』はまちがっている - 漫棚通信ブログ版

    でもっとも絵がうまいマンガ家にして、きわめて寡作。オビに「伝説」と書かれる一ノ関圭の新作がついに発行されました。 ●一ノ関圭『鼻紙写楽』(2015年小学館、1800円+税、amazon) 連載されたのは不定期刊だった小学館の雑誌「ビッグコミック1(ONE)」。2003年から2009年にかけての連載も不定期でした。雑誌休刊とともに連載は中断されていましたが、連載一回分が描き下ろされ、2002年に描かれた10ページの短編「初鰹」を加えて単行化されました。単行編集・企画としてビッグコミック1の編集長だった佐藤敏章の名がありますね。 わたしが雑誌休刊時に描いた記事はコチラ。→(※) 堪能しました。超絶的な絵のうまさ、マンガ的な人物造形の色気、これでもかという考証と歴史を絡めて練られたストーリーの妙、緻密な構成と演出、どれをとっても一級品です。 しかし。 連載一回一回がとんでもない濃密さです

    『鼻紙写楽』はまちがっている - 漫棚通信ブログ版
  • 魅惑の会話劇『子供はわかってあげない』 - 漫棚通信ブログ版

    登場人物がみんなしゃべりっぱなし。しかもこれが楽しい楽しい。 ●田島列島『子供はわかってあげない』上下巻(2014年講談社、各630円+税、amazon) タイトルはもちろんトリュフォーの映画「大人は判ってくれない」のもじり。 マンガというのは小さな物語の集積からできている。これに気づいたのは比較的最近のことです。かつては自分もよくわかってなかった。ひとつひとつの小さな物語、それぞれのシーンをいかにしておもしろく見せるか。 それはハデなアクションかもしれません。登場人物のキザな身ぶりとセリフかもしれません。しかし書では、登場人物のダイアログ。モノローグじゃなくて会話。これがどれもこれもすげー。書では勢いのあるダイアログこそ、物語を牽引する力です。 主人公は高校二年、水泳部のサクタさん(♀)。(1)サクタさんが生き別れの父を捜す話。(2)新興宗教団体での現金盗難事件。(3)サクタさんと書

    魅惑の会話劇『子供はわかってあげない』 - 漫棚通信ブログ版
  • アメコミ邦訳は今どうなっているのか:マーベル編 - 漫棚通信ブログ版

    わたし、文章を書くときはいつも、卓に資料となるマンガを積み上げて、ノートパソコンでぱちぱちやってるわけです。ところが風邪をひいてしまい、同じ卓で勉強するセンター試験前の娘にうつすべからず、というわけでしばらく寝室に追いやられてました。 じゃあこの際、というわけで積ん読になってた邦訳アメコミをずっと読んでました。アメコミ原書は少しだけしか持ってなくって、邦訳中心に読んでるうすいファンですが、邦訳されてるマーベル関連は全冊読了。いや多い多い。 おそらくこの数年こそ、アメコミが史上もっとも多く邦訳されている時期です。とくにヒーローものアメコミ邦訳は映画公開と連動していて、映画公開→邦訳、映画公開→邦訳のパターンとなっていますから、アメコミヒーロー映画が流行している現在、邦訳が増えているのも当然でしょう。 しかし実際に邦訳アメコミの読者数が増えてるかどうかはよくわかりません。日ではコアなファ

    アメコミ邦訳は今どうなっているのか:マーベル編 - 漫棚通信ブログ版
  • あまりにもアメリカ的な『スーパーマン』史 - 漫棚通信ブログ版

    昨年から年にかけてアメコミ史に関連する書物がつぎつぎと翻訳されてます。 ●デヴィッド・ハジュー『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』(小野耕世/中山ゆかり訳、2012年岩波書店、4800円+税、amazon) ●グラント・モリソン『スーパーゴッズ アメリカン・コミックスの超神たち』(中沢俊介訳、2013年小学館集英社プロダクション、3800円+税、amazon) 前者はアメリカン・コミックスにおける1950年代表現規制史について書かれた。当時の出版状況や人名がむちゃ詳しい。 後者はクリエイターだけでなく作品内容についても細かく記された格的なアメコミ史。ただし扱ってるのはスーパーヒーローものだけ、という相当に「濃い」です。 で、三冊目がこれ。 ●ラリー・タイ『スーパーマン 正義と真実、そして星条旗と共に生きた75年』(久美薫訳、2013年現代書館、4000円+税

    あまりにもアメリカ的な『スーパーマン』史 - 漫棚通信ブログ版
  • 歴史にして現在『有害コミック撲滅!』 - 漫棚通信ブログ版

    『有害コミック撲滅!』読みました。 ●デヴィッド・ハジュー『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』(小野耕世/中山ゆかり訳、2012年岩波書店、4800円+税、amazon) 原題は「The Ten-Cent Plague: The Great Comic-Book Scare and How It Changed America」です。訳すと「10セントの悪疫:コミックブックへの恐怖がいかにアメリカを変えたか」という感じでしょうか。 昨年の邦訳発売と同時に買って読み始めたのですが、中断してました。その理由は登場する人名があまりに多いこと。 あ、これは読みとおすにはメモが必要っぽい、と気づいたときはかなり読み進んでしまってて、そのまま強引に読もうとして結局挫折しました。今回は最初からきちんとノートをとりながら再挑戦。いやー、勉強になりました。しかもおもしろい書はア

    歴史にして現在『有害コミック撲滅!』 - 漫棚通信ブログ版
  • 『ウツボラ』を読み解く - 漫棚通信ブログ版

    2巻が発売されたときにすでに読んでいたのですが、と娘(高校生)がワケわからんっ、解説しろとせっつくので書くことにしました。たしかに結末で迷う読者もいるでしょう。わざとわかりにくく描いてるみたいだしなあ。 ●中村明日美子『ウツボラ』1・2巻(2010/2012年太田出版、各680円+税、amazon) 全二巻で完結のミステリ。冒頭の謎はすごく魅力的です。 若い女性がビルの屋上から転落死する。顔のつぶれた死体となった彼女の名は「藤乃朱(あき)」。ケータイにはなぜか二人の履歴しか残っていなかった。ひとりは双子の妹「三木桜(さくら)」、もうひとりは作家の溝呂木(みぞろぎ)だった。 警察に呼び出された溝呂木は、藤乃朱の書いた「ウツボラ」というタイトルの小説を盗作したという秘密を抱えていた。溝呂木は三木桜が藤乃朱とまるきり同じ容姿をしていることに驚く。さらに三木桜は、溝呂木と藤乃朱の間の秘密を知って

    『ウツボラ』を読み解く - 漫棚通信ブログ版
  • オヤジの秘めたる想い『鶏のプラム煮』 - 漫棚通信ブログ版

    マルジャン・サトラピのBD作品は日でも商業的に成功したようです。彼女の出世作『ペルセポリス』(※)のアマゾンでのカスタマーレビューは、この原稿を書いてる時点で23件なのだからすごい。あの作品は第三世界を代表するマンガ、という意味をこえて世界的な普遍性を持った傑作でした。 で、彼女の新しい邦訳作品がこれ。 ●マルジャン・サトラピ『鶏のプラム煮』(渋谷豊訳、2012年小学館集英社プロダクション、1800円+税、amazon) 出版社よりご恵投いただきました。ありがとうございます。 原著は2004年に発行。アングレーム国際漫画祭で2005年の最優秀作品賞を受賞しています。また2011年にはサトラピとヴァンサン・パロノー(別名ヴィンシュルス)の手で実写映画化されました。 今回は『ペルセポリス』みたいな長編じゃなくて小品。サトラピの他作品と同じくモノクロで80ページちょっと。主人公はイラン、テヘラ

    オヤジの秘めたる想い『鶏のプラム煮』 - 漫棚通信ブログ版
  • 三秒で完結するミステリ『3秒』 - 漫棚通信ブログ版

    いやこれはすごい。原著は昨年7月に発売されたばかりですが、歴史に残る作品になるのじゃないか。 ●マルク=アントワーヌ・マチュー『3秒』(原正人訳、2012年河出書房新社、1800円+税、amazon) 出版社よりご恵投いただきました。ありがとうございます。 まずの判型が正方形。1ページに正方形のコマが9つ。この定型的コマ構成が最後までえんえんと約70ページ続きます。絵はモノクロ。フキダシや擬音がなくてサイレント。 第1ページ最初のコマは全面黒塗り。コマの進行とともに中央にぽつんと光が見えてくる。これが拡大されていくとそれは暗い室内から見える明るい窓らしい。窓の向こう側には向かいのビルが見えてくる。そのビルの一室には書影に登場する男がいて、こちらを見ている。カメラはその男の目に寄っていく。もっと寄る。もっと近づく。 すると男の瞳に男が持ってるスマートフォンが映ってるのが見えてきます。どうも

    三秒で完結するミステリ『3秒』 - 漫棚通信ブログ版
  • (コメント欄)食は勝ち負けである『食の軍師』: 漫棚通信ブログ版

    わたしのこれまでの人生で、もっともまずかったべ物は忘れもしない、淡路島の某所でした「タマネギカレー」でした。 ほら、カレーって基的にどんなカレーでもうまいじゃないですか。焦げ茶色のカレーでも黄色いカレーでもハズレなし。ところがそいつは違った。 タマネギって淡路島の名物らしいのね。だからそれを注文したのですが、これが甘い。しかも壮絶に「タマネギ甘い」のです。すべての味を覆い隠す力を持ってるはずのカレーに勝つほどに、タマネギの甘さが脳天につきぬける。わたし、タマネギに負けました。 そしてさらに衝撃だったのは、そのカレーの上にどーんとのっかってるカツ。こ、これはもしかして。 そう、そのとおり。それは「タマネギのカツ」だったのです。泉昌之『夜行』だー!!(こまかくは説明しませんが、かつて「ガロ」に泉昌之のデビュー作『夜行』というマンガが掲載されましてね、これが満天下に衝撃を与えた傑作だったの

    (コメント欄)食は勝ち負けである『食の軍師』: 漫棚通信ブログ版
  • 壁村耐三伝説の「藪の中」 - 漫棚通信ブログ版

    「見えない道場舗」で紹介されてたので、わたしも買ってきました。 ●古谷三敏『ボクの手塚治虫せんせい』(2010年双葉社、1000円+税、amazon) 作品ごとのイレギュラーな「お手伝い」から、職業としてのアシスタントが成立する移行期。古谷三敏が手塚治虫のアシスタントだったころの思い出を描いたエッセイマンガです。 知られざるエピソードがいろいろあって楽しい。内容についてはリンク先の「見えない道場舗」がくわしいのでそちらにおまかせしますが、興味深かったのが、壁村耐三伝説について。 秋田書店の壁村耐三は、「週刊少年チャンピオン」黄金時代をつくりあげた編集長として知られています。彼の功績などはこちらの記事をどうぞ。 ●【マンガ50年】「王者」の伝説(2)怒れる編集長「弱小」返上 ●【マンガ50年】「王者」の伝説(3)部数「あり得ない」急伸 壁村はかずかずの豪快な伝説の持ち主でもあります。い

    壁村耐三伝説の「藪の中」 - 漫棚通信ブログ版
  • マンガで叙述ミステリ『フラクション』 - 漫棚通信ブログ版

    バカミスとは、おバカなミステリのこと。バカという言葉を使いながらも称賛の意味が込められてます。かつては宝島社『このミステリーがすごい!』での年一回のお楽しみだったのですが、最近は載らなくなっちゃたなあ。 マンガ作品としては、さいとう・たかを『ゴルゴ13』の一篇「シャーロッキアン」や、あさりよしとお『少女探偵金田はじめの事件簿』なんかがバカミスとして紹介されたことがあります。 近年のバカミス界がどうなっているかといいますと、イベントとして毎年この時期に「世界バカミス☆アワード」が開催されているそうです。世界と銘うってますが、あらかじめ選ばれた候補作の中から来場者の投票で受賞作を選ぶというもの。 年が第3回で、過去の受賞作はジェイムズ・グレイディ『狂犬は眠らない』(→amazon)、鳥飼否宇『官能的 四つの狂気』(→amazon)。アマゾンの紹介文によると、前者が「スパイとして働きすぎて頭の

    マンガで叙述ミステリ『フラクション』 - 漫棚通信ブログ版
  • 学習マンガ「サルでもわかる非実在青少年」 - 漫棚通信ブログ版

    ふらんつ:いろんな事件も片づいたし、さふぁいあ、さあキスしよう! 結婚しよう! さふぁいあ:それがだめなの。 ふ:どうして!? さ:ここじゃ読者が見てるでしょ。マンガ内に存在する子どもキャラクターであるわたしたちにはセックス類似行為が許されてないの。 ふ:なにそれ? さ:東京都議会に提出された青少年保護条例改正案では、わたしたちは「非実在青少年」ということになるの。 ふ:「非実在青少年」? さ:「非実在青少年」っていうのは、「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの」のことよ。 ふ:わかりにくいなあ。 さ:ともかく、子どもに見えるマンガキャラクターのこと。わたしたち「非実在青少年」としては、「性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的

    学習マンガ「サルでもわかる非実在青少年」 - 漫棚通信ブログ版
  • 『海街diary 』を絶賛する - 漫棚通信ブログ版

    吉田秋生『海街diary 3 陽のあたる坂道』(2010年小学館、505円+税、amazon)が発売されたわけですが。 第1巻が発売されたときから当ブログでは大絶賛しております。お話は3巻まで進み、いやもうなんつーか、傑作。 何かこうさらっとね、日常生活や登場人物の心理を描写。これがまたきわめて繊細でありながらわかりやすいっ。読者は作者の思いどおりに感情をゆさぶられてしまうのですね。 力作とか問題作ではありません。日常の中で事件が起こり、それなりに解決され、それなりの結末をむかえます。かつてテレビで見たホームドラマ、そのもっとも良質なものを21世紀のマンガでやってるわけです。わたしは以前に向田邦子ドラマのよう、という表現を使いましたが、3巻を読んでますますその思いを強くしました。 このマンガのステキなところはいっぱいありますが、まずはキャラクターの魅力。 鎌倉の一軒家に同居している、主人公

    『海街diary 』を絶賛する - 漫棚通信ブログ版
  • 『ジャングル大帝』と白いライオンの謎 - 漫棚通信ブログ版

    手塚治虫は、自作が刊行されるたびに追加執筆と再編集をくりかえしていました。そのため発表当時とはまったく違った形でしか読めなくなった作品も多くあります。 その最たる作品が『ジャングル大帝』です。現在流通している講談社全集版は、原稿の一部紛失のためトレスしたり、幼年向けに描きなおしたりしたものを含めて、エピソードの順番などを変えて再編集したもの。このためコマごとに新しい絵と古い絵が交互に登場するという、そうとうに珍妙な作品になってて、わたしなどはたいへん不満でした。 わたしがくりかえし読んだのは、1969年発行の小学館ゴールデンコミックス版です。総合的に幼年向けになってる講談社全集版より、こっちのほうがよほどましなんですよ。 そういう状況で『漫画少年版ジャングル大帝』(2009年小学館クリエイティブ、7600円+税、amazon)が刊行されたわけです。 講談社全集版とはまったくの別物です。これ

    『ジャングル大帝』と白いライオンの謎 - 漫棚通信ブログ版
  • 「その他大勢」などない『シンプルノットローファー』 - 漫棚通信ブログ版

    衿沢世衣子『シンプルノットローファー』(2009年太田出版、900円+税、amazon、bk1)は、何度も読み返してしまいました。 「モンナンカール女子中等学校/高等学校」に通う女子高生たちの日常を描いた連作短編集。 それぞれのエピソードは、のったりまったりした、なんということもない日常の風景ですが、登場人物たちがみな、何かをなそうとしているのがすがすがしい。こういうのこそ人生において大切な一瞬なのだなあ、とオッサンは思うわけです。 ただしこの作品で少しおどろいたのは、別のところ。 この連作短編の各編では、中心となって描かれるキャラクターがつぎつぎと交代していきます。つまり全作をとおせば、クラス全員が主人公。 ですからあるひとつのエピソードでは、そのあたりを歩いてる人物、背景のはしっこで走ってる人物、教室の隅で話している人物であったりしても、すべてにちゃんと名があり、他のエピソードでは主要

    「その他大勢」などない『シンプルノットローファー』 - 漫棚通信ブログ版
  • 1