2020年6月26日午後、時計台ホールで開かれた京大霊長類研究所の研究不正に関する記者会見は大変な盛況だったらしい。なにしろ40社に近いメディアが詰めかけ、報告に当たった3人の京大関係者(湊・潮見副学長、湯本霊長研所長)は汗だくで釈明に追われたという。話題になるのも当然のこと、不正の規模が5億円と(大学の研究現場としては)桁外れに大きく、そこに登場する人物もニュースの焦点にふさわしい著名な研究者だったからだ。 長年にわたって研究不正を繰り返してきた松沢哲郎氏は、チンパンジーの知性を探る霊長類研究の第一人者として知られる。1976年に霊長研助手に採用されて以来、霊長研一筋で研究生活を送り、所長を2006~12年の6年間にわたって務めた生え抜きの人物である。松沢氏は数々の学会賞受賞に加えて、2013年の文化功労者にも選ばれている。この他、友永・平田教授、森村准教授の3人も霊長研の中核メンバーだ