監督を務めたのが枝正義郎。ウルトラマンの生みの親である円谷英二を映画の世界に引き入れた、円谷の師匠にあたる人物だ。映画の内容は、当時日本一の大きさの大仏と言われた愛知県知多郡聚楽園(現在の愛知県東海市)の大仏が動き出し、名古屋を中心とした中京地方の名所を巡るというものである。 同映画は、当時としては最新の一部カラー、オールトーキー(発声映画)として作られていた。しかしすでにフィルムは失われ今日ではすべてを知ることはできない。当時の新聞や雑誌での解説、映画広告やポスターから内容の断片を拾えるだけだ。 そのため特撮ファンの間では伝説の作品となっている。 大仏が歩いて名古屋の名所を網羅する 『大佛廻國・中京篇』の映像は残っていないが、当時の新聞や雑誌の記事などを洗い出すと、大まかなストーリーは見えてくる。 当時の名古屋新聞(現在の中日新聞)によれば、座して62尺、立って110尺の聚楽園の大仏が、