図書紹介と感想――小熊英二著『〈民主〉と〈愛国〉』 以下は『季刊 運動〈経験〉』 (反天皇制運動連絡会編集・ 軌跡社発行) 2003年冬号の「本を読む」というコラムに書いた文章です。 小熊英二著『〈民主〉と〈愛国〉』(新曜社刊 定価 6,300円+税) 吉 川 勇 一 1000ページに近い大著である。それに書名にある「愛国」という言葉だの、その字体(太字教科書体か)だの、そして天皇裕仁が原爆ドームの前の大群衆に帽子を振る写真といった装丁などから、一見、右翼を論じた書物かと思え、すぐ手に取る気持ちになれないかもしれない。だが、「戦後日本のナショナリズムと公共性」というサブタイトルからもわかるように、これは戦後の思想史についての労作、力作である。 第二次大戦中と戦争直後の丸山眞男と大塚久雄の思想を解析、詳述した第2章「総力戦と民主主義」の最後で、著者はこうのべる。……丸山や大塚の思想は、戦争体