この春の上野の西美の新収蔵品に,フェルメールに帰属するという説のある作品があり,美術ファンの間でちょっとだけ話題になった。直接見に行ったら,現地ではかなり詳細な説明が配布されていた。これを読むと作者の同定論争がかなり興味深かったので,はしょって紹介しておく。 フェルメールの真作は最小数でおおよそ35点(本当に疑い深い人なら33点)となっており,そこから41点までは幅がある。本作は疑わしい方の6点の一つだ。疑わしいなら公的な美術館で買うなよ,と思うかもしれないが,それは勘違いである。本作は西美の購入品ではない(よく見ると「新規展示作品」としか書いていない)。本来は個人蔵であるところ,研究者及び美術ファンに検証の機会を提供するため,寄託されたものだ。所有者には感謝の意を捧げたい。 ぱっと見で本作がフェルメールらしくない最大の理由は,これが宗教画だという点だ。タイトルにもなっている「聖プラクセデ