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ブックマーク / www.nagamura.jp (12)

  • 「人」か「入」か (明朝体・考)

    漢字の部分字形としての「人」と「入」は,よく置換対象になる。「内」もいろいろに解釈されるが,旧字体では「入」につくる。啓成社版の大字典では,わざわざ【注意】として「俗に冂と人の合字とす。されど字は入に従うべし」と記している。部首も「入」である。康煕字典においても部首「入」,実際の字形も冂+入となっている。しかし,これを「人」につくる辞典もある。 さて,全字形の「内」はまだよいとして,部分字形となった場合に中が「人」なのか「入」なのかがわかりにくいデザインを見かける。それは漢和辞典の中にも散見される現象である(屋根付きだからと言って「入」と断定することは間違いである)。 とくに「兩」や「齒」が部分字形になった文字などは,もともとデザイン領域が狭いために,よほど意識してデザインしないとどちらなのかがわからない文字になってしまう。 漢和辞典の親字デザインは辞書編纂者とフォントデザイナーの

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    schrift 2007/11/17
  • 見掛け2画表現について (明朝体・考)

    « 不思議なカクシガマエ(補足その2) | Main | 漢和辞典における漢字の画数属性 » 2007年09月25日 …【漢和辞典の字形を「斬る」】 見掛け2画表現について さらに重箱の隅をつつくようだが,明朝体様式のひとつである「見掛け2画」に関してみてみたい。 見掛け2画でよく例に出されるのが「衣」である。この4画目が2ストロークに見える。これが見掛け2画と呼ばれているものである。 漢字には「形・音・義」の3要素を持ち,さらに形(すなわち字形)には部首とともに画数という属性がある。字形がきわめて似ていても画数が違う文字はたくさんあり,また,漢和辞典を引く際にも画数を拠りどころとすることが多いので,漢字の画数というのは日常生活の場でも非常に重要な属性情報である。 この観点からは,上述の「見掛け2画」はややこしい問題を引き起こす。これと同じ問題が,いわゆる「ゲタ」の存在にもみられるこ

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    schrift 2007/09/26
  • 不思議なカクシガマエ (明朝体・考)

    伝統的な部首の中にハコガマエ(匚)とカクシガマエ(匸)がある。もともとはまったく別モノなのであるが,新字体・旧字体の差の指標にしている辞典もあり,字形解釈上も気をつけなければならない。 ところが,ハコガマエとカクシガマエの中間的とも言える字形を採用している漢和辞典がある。今回取り上げるのは角川『大字源』である。 左図を見ていただきたい。これはお馴染みの「区」の新字体と旧字体であるが,新字体(検字番号898)がハコガマエであることは当然として,旧字体(検字番号897)のカクシガマエが一種独特なのである。カクシガマエの2画目転折以降が横画になって収筆部にはウロコまで付いている。まさにハコガマエとカクシガマエを足して二で割った感じの字形である。他の辞典ではほとんど現れない形だ。私はこれに「ウロコ付きカクシガマエ」と命名している。 文化庁の『明朝体活字字形一覧』には,「区」の旧字体として,モ

  • 明朝体様式のまとめ(1) (明朝体・考)

    明朝体様式に関する諸問題について,実際の字形デザイン現場からの視点で縷々述べてきた。しかし,とくに明朝体漢字においては字形論としても奥が深く,とてもゴールに行き着くまでには至らない。したがって,やや中途半端の謗りを免れないことを承知の上で,そろそろこのテーマも「まとめ」に入ることにさせていただく。書き足りない事項については,別途補足していく予定である。 明朝体の定義については,一般向けとしては「縦の画は太く、横の画の細いもの」(『広辞苑』),「縦線が太く、横線が細い」(『日語大辞典』)といった説明がなされる。ウェブを散見すると「縦線が横線より太く、払いやはねが顕著に表現されているフォントの総称」という定義も見受けられるが,これは広く捉えすぎの感なくもない。Wikipediaでは「縦線と横線はそれぞれ垂直・平行で、一般に縦線が太く横線が細い。しかし、「亡」や「戈」などの折れ曲がりでは、横

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    schrift 2007/08/06
  • 墨溜りの効用(2) (明朝体・考)

    墨溜りの効用について,基に立ち返って考えてみたい。 右図は「十」の図形である。これを見ると,縦横,各一の線が交差しているように見える。しかしほんとうはそうではないかもしれないのである。 つぎにいくつかのバリエーションを図示する。 このように一ごとの線が他の線に接触せずに配置されていれば誤ることはないのであるが,実際の文字の場合には限られた空間に多くの線画を配置しなければならず,結果としてどうしても接触することが避けられない場合も多い。 上図の場合,一の線は角が直角の長方形である。しかし実際に筆で書く場合,特に楷書では,いわゆる三折法,すなわち起筆,送筆,収筆それぞれの運筆(方向・強弱・早遅)で書く。明朝体もこの楷書の筆法を(いくぶんかは)踏襲しているから,書体にもよるが起筆,送筆,収筆に一定の図形的特長を持たせている。 伝統的な明朝体の例として,つぎにモリサワのリューミンの「

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    schrift 2007/04/26
  • 墨溜りの効用(1) (明朝体・考)

    « 敝の画数について | Main | 『名家による尺牘と臨書作品』展を見る » 2007年04月11日 …【明朝体の様式】 墨溜りの効用(1) 敝の画数問題について述べた。漢和辞典では部首「攴」の8画,しかし同じ字形が部分になっている文字の中には,これを7画に数えるものもあり,ほんとうは7画に数えるべきではないか,という意見は頷ける。干禄字書にも「弊」,「鼈」が載っているが,正字はこの部分を7画に数える筆法である。 どちらの説を採るかは別として,少なくとも画数・筆順などの基属性をできるだけ正しく表現する努力をすべきなのが明朝体という書体に課せられた義務である。「墨溜り」というのは,そのためのきわめて有力なツールであることは強調してよいであろう。 この「墨溜り」については次回以降でやや詳しく述べたいと思う。しかしその前に,より卑近な字例を挙げておきたい。次の文字を見ていただきたい。

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    schrift 2007/04/12
  • 敝の画数について (明朝体・考)

    この文字の画数は12画であるが,11画,すなわち中央の縦画を1に書く構造であると思う人も多いのではないか。問題なのは,この偏にみられる部分字形は学校教育の場で筆法を教える対象でなく,この文字に接する者は,この字形だけから判断しなければならないことがあり得るということである。 上の文字デザインでは真ん中の縦画は明らかに1にみえるから,11画と誤解することは十分に考えられる。しかも悪いことに右に示す文字の場合には真ん中の縦画が貫く12画の文字なのである。「敝」の偏と「黹」の下部は明らかに同一形状であるのに,この部分は筆順・画数が異なるということである。したがってこれらのちがいを文字デザインにも反映させ,正しい解釈ができるようにしておくことが重要ではあるまいか。 つぎの二つの文字は,それぞれの縦画起筆に,いわゆる「墨溜り」と称する瘤を付けたか付けないかだけの差であるが,この僅かな差で画数

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    schrift 2007/04/02
  • 「臣」の字形について考える(1) (明朝体・考)

    この漢字は教育漢字のひとつであり,第四学年で履修する。筆順は右図の通りで画数は7画である(江守賢次『漢字筆順ハンドブック』三省堂)。ところが戦前はこれを6画に数えていた。それでは,「臣」字に画数違いを明示する字形的特長を持っているのであろうか。 左図は,戦前の『大字典』(啓成社版:左)と戦後の『新大字典』(講談社版:右)の「臣」を並べたものであるが字形としてはまったく同形である。すなわち画数違いは字形に反映されていないのである。 もうひとつの例を挙げる。次は『大字源』の部首見出し部であるが,部首「臣」は6画と7画の両方に載っている(この問題は別途検討する)。しかし,この両方の(画数が違う)「臣」に字形差はない。つまり画数差は字形に反映されていないのである。 そこで前回の「明朝体様式」を思い起こしていただきたい。「口」と「区」の左下字形は同じであるが,前者は縦画の収筆と横画の起筆を表わ

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    schrift 2007/03/05
  • フォントインフラに関する二つの話題 (明朝体・考)

    « 明朝体様式に要求されること | Main | 「臣」の字形について考える(1) » 2007年03月03日 …【最近の話題】 フォントインフラに関する二つの話題 インデックスフォント研究会に参加 一昨日の3月1日,第15回インデックスフォント研究会が開催され,オブザーバとして参加した。この研究会の存在と活動の概要は知っていたが,実際に参加したのは初めてである。 これは簡単に言えば,外字問題を解決するための仕組みとして著者には「今昔文字鏡」を利用してもらうとともに外字(規格外文字)は文字鏡番号を付けてもらうこととし,受け側(処理側)ではインデックスフォントを用いることによって外字を含む原稿を正しく交換できるようにしようとするものである。異種システム間では,インデックスフォント番号を用いることで外字問題を解決できるという。 ただ,インデックスフォント番号がユニコードのPUAを使用するこ

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    schrift 2007/03/05
  • Vistaの文字問題 (明朝体・考)

    新しいWindows OS“Vista”の登場 1月30日にマイクロソフトはWindows Vistaを発売開始した。それに呼応してパソコン雑誌も“Vista特集”を組んで宣伝に力を入れている。パソコン雑誌としてはOSが変わったときが一番の売れ時なので力が入るのも頷ける。しかしその中から数冊を選んでパラパラとページをめくってみて強く感じることがあった。“Vista”をよいこと尽くめのように持ち上げていて,大きな問題の存在をはっきり書いているものはほとんどなかったのである。 しかし,もちろんそんなことはない。文字問題がそれである。 Vistaの文字問題とは 今回のOSではシステムフォントとして新たに「メイリオ」という書体が搭載された。この書体名は「明瞭」が訛ったものだそうであるが,その書体の字体までも訛ってしまった。漢字122字について,従来のMS明朝,MSゴシックの字体とは変わってしまっ

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    schrift 2007/02/11
  • 朝日新聞,文字を変える(2) (明朝体・考)

    « 朝日新聞,文字を変える(1) | Main | (3)ほんとうに「わかる」ということ » 2006年09月14日 …【最近の話題】 朝日新聞,文字を変える(2) 文字を拡大してみる 朝日新聞が文字を太めた効果についてNORIさんからコメントいただいた。詳細はコメントを読んでいただくとして,たいへん示唆に富んだものである。そこで,これを受けて今回も朝日新聞の文字変更について,続編として少しだけ書かせていただく。「閑話休題」が続くことをお許しいただきたい。 どの程度を太めたのかについての定量的測定は行っていないが,次図に拡大した文字を載せる。これは前回の「変更前後」の紙面を2400dpiで再スキャンした結果の一部を切り出したもので,左の「日 ない」は変更前,右の「日 ない」と「書」は変更後の文字である。 これをみると,漢字については横画だけでなく,ハライ要素も垂直方向には同率で太め

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    schrift 2006/11/28
  • 明朝体・考

    【まとめ】 …2008年08月03日 まとめ(2)-最終章 明朝体を中心とした考現学的な話題や問題提起をテーマとして,とりあえず100回ぐらいまでは続けようという「適当な」目標を立ててスタートしたこのブログも,ついに(!)100回を迎えた。当初の予定にしたがって,今回を以って一応の幕を閉じることにしたい。 もとより内容や構成に関してしっかりした計画を立てて臨んだわけではなく,常々疑問に思っていること,その時々に感じたこと,または時事的な話題を書いてきただけである。したがって全体を読み直してみても,何の統一も脈絡もなく,通して読んでいただくと,たぶん,かなり支離滅裂な感じを受けられるかもしれないし,かならずしも重要なことを優先的に記してきたとも言えない。 そういう意味では,まだまだ書きたいこともあるので,また別のブログを立ち上げて論じていきたい。とくに,「これだけは主張しておきたい」と思

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    schrift 2006/11/15
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