たぶん本が好きだと思うのだがいままであまり深く考えずに「本を読むのが好き」と言ってきたが、これは事実だろうか。本に接していて、どのような瞬間にもっとも喜びを感じるのか、自分なりに考え直してみたのである。いま私は、1日に少なくとも2時間は本を読んでいるので、たぶん読書が好きなのだと思う。毎日せっせと読んではいるものの、しかし最近どうも「本を読むのが好き」という前提が怪しい気がしてきたのである。私はたくさんの本を読みたい欲求が強いのだが、これは1冊の本を大切に読む態度と相反するのではないか。私はとにかく、さまざまなタイプの本を次々と、ハチャメチャな速度で読みたいのである。 そのため、本に接していていちばん嬉しいのは「ある本を読み終えて、次に何の本を読もうかと考えている時間」である。次にどんな本を読んでもいい、なぜならこの本は読み終えたのだから──。目の前に無限の扉が開いているような、この感覚。
![不純な読書|伊藤聡](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/d445a0a188ae664462fd60252423eb2994821110/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fassets.st-note.com%2Fproduction%2Fuploads%2Fimages%2F50477910%2Frectangle_large_type_2_de4c2885c5de235955e1303b0ec3705f.jpeg%3Ffit%3Dbounds%26quality%3D85%26width%3D1280)