彼女はこの十年で二度職場を変えた。二つ目の職場にいたときの彼女は、継続的に摩耗していた。首筋から背中にかけて、骨でしかないはずの場所から常にかすかな痒みが滲んでいた。 私の骨髄が劣化している、と彼女は思った。骨の中身が腐った水になってそこから虫が湧いているみたいだ。それからその比喩のばかばかしさに少し笑った。骨の中で虫が育って生きていられるはずがないじゃないか。 それからこの思いつきそのものを骨の病気にかかった人に失礼だからやめなさいと言う人がいるんだろうなと思った。独白での言い回しにさえ監視の目を意識するような怯懦が習い性になっていた。彼女は玄関で靴を脱ぎながらそのことに気づいて台所から古いカップを持って玄関に戻りそれを三和土に投げつけた。いい音がした。それは最初に親しくなった男の子が(彼は男の子で、彼女ももちろん女の子だった。十八歳のかたくなで潔癖な女の子だった。彼は彼女を好きだと言っ
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