昨年秋に上梓した『沢村忠に真空を飛ばせた男/昭和のプロモーター・野口修評伝』(新潮社)の取材過程において、筆者は主人公野口修の口から、多くの人物の知られざる一面を聞いた。父親の野口進や“戦後最大の黒幕”児玉誉士夫。“ゴッドハンド”大山倍達。“キックの鬼”沢村忠や“国民的歌手”五木ひろしの前半生も興味深いものがあった。 その中において、責了後なおも筆者の関心を惹いて止まなかったのが、野口修が少年時代に出会った嘉納健治である。 射撃の名手「ピス健」=嘉納健治とは何者か? 大正から昭和前期にかけての神戸の大物やくざにして「ピス健」と呼ばれた射撃の名手。野口修の父・野口進も所属した大日本拳闘会の会長。前稿でも詳述したように、日本に拳闘(ボクシング)興行を根付かせた功労者の一人でもある。
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