70年代の終わり頃、18歳の私は初めて男の人と付き合い、半年経って別れた。同じ頃、『話の特集』という雑誌を購読するようになり、そこで中山千夏を知った。ウーマン・リブという言葉がまだリアルなものとして生きていた時代である。 フェミニズム系の本には親しんでいなかった私だが、中山千夏の言葉遣いには興味を引かれ、『からだノート』という本を買った。 1ページに一つずつ、性についての短いカジュアルな文章が書かれている中に、恋人らしい男女の会話としてこんなものがあった。既に本が手元にないので記憶で書く。 男「どんなに抱き合っても一つにはなれないんだね。さびしい」 女「だから抱き合えるのよ。うれしい」 当時これを読んで、なーんかドラマの台詞みたいでちょっとこっぱずかしいなーという感じをもちつつも、「うまいこと言うもんだ」と感心したのを覚えている。 男と女に台詞が振り分けられているが、恋愛がピークにさしかか