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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (13)

  • 兵站に焦点をおいたミリタリーSF──『星系出雲の兵站』 - 基本読書

    星系出雲の兵站 1 (ハヤカワ文庫JA) 作者: 林譲治,Rey.Hori出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/08/21メディア: 文庫この商品を含むブログを見るミリタリーSFといえばおおむね超光速航法があり、人類よりも高度な技術力を持つ敵エイリアンがいて、英雄的艦長がいて、とお約束がある。当然すべてが同じではつまらないので、それぞれの作品ごとに、お約束をちょっと外してみたり、”どこにこだわるか”を決め(キャラクター性だったり、艦隊戦の描写だったり、兵士たちの感情だったり、経済に注目してみたり)特色が出てくるものなのだが、林譲治による作『星系出雲の兵站』でこだわっているのは、書名にも入っている通り”兵站”だ。 書のあとがきは『子供の頃から疑問に思っていたことに、TV・映画などで地球を侵略に来る宇宙人への疑問があった。どうして彼らは地球人より高度な技術を持っているのに、負けて

    兵站に焦点をおいたミリタリーSF──『星系出雲の兵站』 - 基本読書
  • 転生したら人工知能にさせられ、有無を言わせず居住可能惑星探査に送り出された件──『われらはレギオン1 AI探査機集合体』 - 基本読書

    われらはレギオン1 AI探査機集合体 (ハヤカワ文庫SF) 作者: デニス・E・テイラー,EVILVIT,金子浩出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/04/04メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見るSF大会に欠かさず参加し誰かれ構わずSFネタを喋り散らすクソSFオタクであるボブは、無神論者で、人体冷凍保存会社(死亡した直後に頭部のみを切断し、未来の技術が生き返らせられるようになるまで保存しておく会社。ちなみに実在する。)と契約するような人間だが、そんな彼がある日突然の交通事故で死んでしまう──。 意識を取り戻した彼がいるのは、なんと117年後のキリスト教原理主義国家となったアメリカ。そのうえ彼は生身の身体を持たない複製人(レプリカント)*1となっていた! 国家の所有物となった彼に与えられた任務は居住可能惑星探査! 自己増殖する自動恒星間探査機に知的機能の制御係とし

    転生したら人工知能にさせられ、有無を言わせず居住可能惑星探査に送り出された件──『われらはレギオン1 AI探査機集合体』 - 基本読書
  • 早川書房の電子書籍版「海外SFセール」がきたので個人的オススメを紹介する - 基本読書

    早川書房が突然電子書籍版の海外SFセールをはじめたので、SFマガジンで海外SFブックガイドの連載を担当していてかつブログも書いている身なので、これはまあ、さすがになんかオススメとか書いておいたほうがいいかという気持ちになってきたので今この記事を書いている。いろいろな角度からオススメしたいばかりなので全部取り上げられるわけではないが、まあ軽い目安としてご活用ください。 まずはこれを読むと良いのでは?? ハヤカワ文庫SF総解説2000 (早川書房) 出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/07/08メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るハヤカワ文庫SF総解説2000。2015年に出た『ソラリス』文庫版によって2000番に到達したハヤカワ文庫SFを記念して、2000冊分のSFを総解説した一冊。ほとんどの作品は340文字で的確に、シリーズ物などは1ページまるっと使って解説し

    早川書房の電子書籍版「海外SFセール」がきたので個人的オススメを紹介する - 基本読書
  • 新しい現実を解読するための、新しい『1984』──『2084 世界の終わり』 - 基本読書

    2084 世界の終わり 作者: ブアレムサンサル,Boualem Sansal,中村佳子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/08/28メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る書はアルジェリアの作家ブアレム・サンサルによる7番目の長篇にして、日では初めての邦訳書になる。また、その書名からもわかるとおりに、明確に『1984』を意識して書かれたディストピア小説でもある。『現実はもう、オーウェルの『1984』の説明では補いきれなくなっていました。』と語る著者が、新しい『1984』を描くために導入した世界観は「宗教が支配する全体国家」というもの。 現実はもう、オーウェルの『1984』の説明では補いきれなくなっていました。わたしたちが見ている全体主義的な幻想世界には、アラー、預言者、そして絶対に過ちなど犯さない聖人や代理人たちとちった新しい登場人物が、いつのまにか入

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  • インターネットの大失敗『インターネットは自由を奪う――〈無料〉という落とし穴』 - 基本読書

    インターネットは自由を奪う――〈無料〉という落とし穴 作者: アンドリューキーン,Andrew Keen,中島由華出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/08/24メディア: 単行この商品を含むブログを見るインターネット、それはなくてはならぬ文明の利器! 職がプログラマーたる僕としてもこれがなくなってしまったら即座にいっぱぐれてしまう大切なものだ。とはいえ、そこには負の側面が存在するのもまた事実。便利な通販サイトの存在によって街の小売店は廃業に追いやられ、人々は日夜TwitterやFacebook、Instagramで自身の評判を高めるためにしのぎを削る。漫画音楽の海賊版は横行し金も払わずに多くの人がコンテンツを楽しむようになってしまった暗黒の世界が広がっている! というわけで書『インターネットは自由を奪う――〈無料〉という落とし穴』(原題「THE INTERNET IS

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  • 経済はごまかしに満ちている──『不道徳な見えざる手』 - 基本読書

    不道徳な見えざる手 作者: ジョージ・A.アカロフ,ロバート・J.シラー,George A. Akerlof,Robert J. Shiller,山形浩生出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2017/05/12メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る書はあまりまとまっては指摘されることのない、"市場で行われる釣り/詐術"の手口についての一冊である。わかりやすい例から紹介すると、"ジムに来場一回ごとに金を支払う"か"月次の自動更新払い"か"年額払い"かといった選択肢がある時に、ほとんどの顧客は月次契約を選ぶが、八割の人は一回ごとの方が安上がりとなる。 つまり、ほとんどのジム会員は"月次で支払っても元がとれるぐらい来る"という思い込みに釣られて無駄な金を支払っているのである(心当たりがある人も多いのではなかろうか)。ジムだけでなく、似たような事例は世の中に溢れている。

    経済はごまかしに満ちている──『不道徳な見えざる手』 - 基本読書
  • 階層世界を舞台に、作家らの個性が奔放に炸裂した傑作──『BLAME! THE ANTHOLOGY』 - 基本読書

    BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA) 作者: 九岡望,小川一水,野崎まど,酉島伝法,飛浩隆,弐瓶勉出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/05/09メディア: 文庫この商品を含むブログを見る書は弐瓶勉による傑作『BLAME!』の世界観を題材とし、九岡望、小川一水、野崎まど、酉島伝法、飛浩隆と実力が確かな第一線の作家らが短篇をよせたアンソロジー。正直登場面子を聞いた時から「これは凄いものになるぞ」とワクワクが止まらなかったわけだけれども、出てきたものはそれを遥かに超える水準の作品である。 この水準の高さは、単に短篇単品で傑作であることにとどまらない。それぞれの作家が好き放題やらかしているにも関わらず、まるでびくともせずに、尽きせぬ魅力を発揮し続ける『BLAME!』という原作の素晴らしさを再確認させてくれたことも関係している。何しろ、誰がどんなとんでもないこ

    階層世界を舞台に、作家らの個性が奔放に炸裂した傑作──『BLAME! THE ANTHOLOGY』 - 基本読書
  • 約15万円の講座を圧縮して読めるハイパフォーマンスな一冊──『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』 - 基本読書

    SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録 作者: 大森望,東浩紀,長谷敏司,冲方丁,藤井太洋,宮内悠介,法月綸太郎,新井素子,円城塔,小川一水,山田正紀出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/04/20メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る書は東浩紀さん率いるゲンロンで一年間開催されていた、大森望さんによるSF創作講座をまとめた一冊になる。受講料は第一期が148000円、第二期が168000円(税別)となかなかのお値段がするが(とはいえ、物にもよるがこの手の講義からするとお手頃だと思う)、内容の充実度、その場所で副次的に得られるものを考えると安いものだろう。なにしろ、募集開始から枠がすぐに埋まってしまうのだから。 創作講座の充実度。 (ゲンロンの回し者のように見えるとアレだが)SF創作講座から得られるものを率直に考えてみると、まず講

    約15万円の講座を圧縮して読めるハイパフォーマンスな一冊──『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』 - 基本読書
  • 笑ってしまって読み進まない──『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』 - 基本読書

    鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。 作者: 川上和人,出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2017/04/18メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る書は一言でいうと鳥類学者による研究生活をつづった鳥エッセイ集なのだが、これがまあ異様におもしろい。鳥類学者として著者がしてきた研究内容、体験談がそのまんまおもしろいのはもちろんだが、それ以上に文体がエキセントリックである。 霧の中に点々と鳥の死体が落ちている。日常生活では、鳥の死体は反物質と対消滅してしまうため目にする機会は少ないが、南硫黄島には反物質がないので消滅しない。それどころか、ネズミやカラスなど死体をべる脊椎動物もおらず、死体はゆっくり分解される。よく見ると、蔓や枝にも死体が引っかかっている。生体よりも死体が好きな私には、天国のような地獄絵図である。多産される死体は豊かな自然の証拠だ。結構

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  • あの時、アメリカで何が起こっていたのか──『セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争』 - 基本読書

    セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争(上) 作者: ブレイク J ハリス,Blake J. Harris,仲達志出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/03/23メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るPS4とSwitchが盛況な現代だけれども、かつてセガと任天堂がゲーム機の覇権をめぐり争っていた日々があった。日視点からするとセガのハードといえばドリームキャストの印象が強いかもしれないが、メガドライブ(北米版はジェネシス)がアメリカでは任天堂のシェアを上回るなど、互角の戦いを繰り広げていた時代があるのだ。 書はそうしたアメリカで起こっていたハード戦争の一時代を、主にアメリカ(セガ・オブ・アメリカ(SOA)、ニンテンドー・オブ・アメリカ)の視点から、数百のインタビューを元にストーリー仕立てで構成した一冊になる。セガ視点が多めで、その中でもSOA

    あの時、アメリカで何が起こっていたのか──『セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争』 - 基本読書
  • 筒井康隆を軽く飛び越えていった才能──『ビアンカ・オーバーステップ』 - 基本読書

    ビアンカ・オーバーステップ(上) (星海社FICTIONS) 作者:筒城 灯士郎,いとう のいぢ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/03/16メディア: 単行(ソフトカバー)ビアンカ・オーバーステップ(下) (星海社FICTIONS) 作者:筒城 灯士郎,いとう のいぢ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/03/16メディア: 単行(ソフトカバー)いやはや。 書『ビアンカ・オーバーステップ』は元々筒井康隆がはじめてライトノベルを書いたという触れ込みで発売された『ビアンカ・オーバースタディ』のあとがきで存在を明かされ、「誰か続篇を書いてくれ」と後に託された作品であった。それをデビューもしていない著者が勝手に書いて新人賞に応募してしまったものの書籍化である。 狂人かな? 読み終えて思ったのは著者は狂人なのだろうなということである。何しろあまりにおもしろい。章ごとどころか

    筒井康隆を軽く飛び越えていった才能──『ビアンカ・オーバーステップ』 - 基本読書
  • 人工知能本読みすぎて飽きたけどその中でも記憶に残っている本を紹介する - 基本読書

    この数年人工知能バブルかってぐらい人工知能関連が出まくっていて、最初の頃は律儀に一冊一冊読んでいたもんだが、だんだん飽きてきた(そりゃ読みまくってるんだからそうだ)。やれ人工知能仕事が奪われるだとか奪われない仕事はなんだとかの話は定番だが、定番すぎてそうそう新しい解釈が出てくるわけではない。消える仕事は消えるし、残る仕事の分野もだいたい明らかになってきている。 とはいえそれでも読んでいると「おお、これは視点が良いな」と思えるものもあり、そういうのは読んでいて楽しい。その書き手はやっぱり基的には専門的な知識を持っている人たちだ。認知ロボット工学者であったり、AI研究所に勤めていたり、機械学習の専門家だったりする。最後のはまた特殊事例といえるが、稿ではそうした人工知能飽きた僕の中で記憶に残っているをいくつか紹介してみようと思う。 まずは基的なところを教えてくれる一冊 シンギュラリ

    人工知能本読みすぎて飽きたけどその中でも記憶に残っている本を紹介する - 基本読書
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    2024-08-19 プラットフォームが巨大な力を持って人間を支配するとき、どう対抗すべきなのか──『デジタルの皇帝たち――プラットフォームが国家を超えるとき』 科学ノンフィクション 献御礼 オススメ! デジタルの皇帝たち――プラットフォームが国家を超えるときみすず書房Amazonプラットフォームが大きな力をふるう時代である。アマゾンで日々の必需品を買い、ウーバーで事を配達してもらう。海外では配車アプリの方で生計をたてている人も多い。Appleのアプ… 2024-08-11 卓越した先見性こそが人間を地球の覇者たらしめた──『「未来」を発明したサル: 記憶と予測の人類史』 献御礼 科学ノンフィクション 「未来」を発明したサル 記憶と予測の人類史作者:トーマス スーデンドルフ,ジョナサン レッドショウ,アダム ブリー早川書房Amazonわれわれは当たり前のように未来を予測して現在の行動

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