『求む、師匠』 突然に、師匠が欲しくなった。 プロ・マジシャン歴33年にもなるというのに、 なぜか師匠が欲しくてたまらなくなったのだ。 先日、いつものように、 「なにか、良いアイデア、 新ネタはないかなぁ。 どうにも、浮かばないなぁ」 と、嘆息していた。 すると急に、 「師匠はこんな時、 どう答えてくれていたかなぁ」 そう夢想する自分がいたのだ。 本当に、30年ぶりの想いだ。 そうなると私の心は、 「師匠さえいてくれれば、今のこの漠然とした 不安や疑問、 あるいは悩みさえも聞いてくれて、 弟子たちはたちまちホッとしてしまうに違いない。 師匠さえいてくれれば‥‥」 自分で解決することなど捨てて、 師匠に寄りかかってしまおうとするのだった。 こちらから打ち明けなくても、 師匠は私の表情を見て 心の中を探るのだった。 「どうしたぁ、ははぁ~ん。 また、しょうもないことで悩んでるなぁ。 きっと悩み