二人だけの卒業式。真の卒業式。その日に交わした初めての契りはこの3年間の高校生活の集大成を飾るような烈しくも甘美な形を彩り、二人の愛の着地点でもあったのか。そう解釈してしまうのも些か虚しい気もするのだが、少なくとも一つの節目であった事には違いないだろう。 それが真の愛なのか、勢いだけのものなのか。聡明なさゆりが勢いだけで他人に靡く訳がないと確信していた英昭は今一度彼女の顔を見つめながら呟くのだった。 「良かったな」 さゆりは少し照れながらも相変わらずの毅然とした態度で答える。 「そうね、良かったわ」 そして顔を見合わせた二人は徐に笑すのだった。愛に理屈など要らないと言えば尤もらしくも聴こえるのだがそれだけで良いとも言い切れない。愛し合う理由と言えば硬く感じるがそこに多少なりとも理を求める事も事実ではあり、亦それこそが人間の弱さのような気もする。 有形無形。この二つの形が織りなす真意とは何な
![甦るパノラマ 十四話 - 人生は花鳥風月](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/15c51c814ebbb002e5e80ff462b68b5022ba8231/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Fgarou%2Fcabinet%2F01204550%2F02374479%2Fimg59528536.jpg%3F_ex%3D500x500)