牡鹿半島の付け根にある宮城県女川町は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた。過疎が進む人口約1万人の小さな港町の起爆剤として生まれたサッカーチームも、活動中断を余儀なくされた。町民の夢と希望を託された選手は無事で、大半は支えてくれた町に残っている。中島礼司選手(31)は「許されるなら、またこの町でサッカーがしたい」と静かに話した。 潮の香りが漂う中、東北社会人リーグ2部「コバルトーレ女川」の選手らが、普段の勤務先の水産加工会社でかまぼこづくりに精を出していた。入り江と山に挟まれたわずかな平地にある工場は、なんとか稼働した。在庫の原料でかまぼこをつくり、避難所に向かった。当初まんじゅう1個しか配られなかった被災者から大歓迎された。 リーグ開幕のめどは立たず先は見えないが、県外出身ばかりの選手から移籍希望の声は出てこない。栃木県出身のGK泉田圭太選手(24)は「どこかに行こうとは思わない。世話に