歴史水木さんは呑気で楽天的なことしか言わないと思ったら大間違いなのです。日本以外の国の人はここのところを少し取り違えているのではないかと思うので、そういう人に出会ったら、水木さんはこんなことも書いているんだよと教えてあげてください。私が祖国でよく引合いに出していた以下の文は、「人生に幸福とよばれるものはない」というエッセイからの引用です。私はそのとき、四十年をふりかえってみました。それは苦しみ以外のなにものでもありませんでした。前記の、苦心して作った「形の百科辞典」もその威力を発揮できないままに不発に終わり、しかも今まで四十すぎて有名になったマンガかきというものは皆無でしたから、元気もあまり出ません。私はひそかに人生をのろうようになりました。『妖怪天国』より私はそのように、長い間マンガに挑戦し、いまは世間的には報いられましたが、私は少しも幸福ではありません。また過去においても、幸福だと思っ