藤子・F・不二雄のSF短編のことを知ったのは、実を言うと、2000年に発行された永井均の『マンガは哲学する』経由であり、つまり、私はSF短編集のかなり遅れて来たファンなのである。私が2000年に読んだ『マンガは哲学する』は講談社刊の単行本だったが、同書はその後2004年に講談社で文庫化され、さらにその後出版社を変えて2009年に岩波現代文庫版が出て、現在に至る。 www.iwanami.co.jp 私は、2009年に、Web評論誌「コーラ」に「吸血鬼はフランツ・ファノンの夢を見るか」という論文を書いた。この論文で私は、藤子・F・不二雄のSF短編の中の「絶滅の島」(1985年)と「流血鬼」(1978年)という2つの作品を題材に、サルトルとファノンとろう文化などについて論じたのだが、今から思えばこの論文のテーマは、前回の記事で紹介した竹内の発言にある「加害者と被害者との歴史のなかでの弁証法的逆