育ちは争えんなあ、と自分でも笑うのは、たこ焼きとお好み焼きに対する思い入れである。東京暮らしのほうが長くなったいまも、いや、そうだからこそ、関西育ちというのは「ほんまもん」に拘泥したくなる。 本書は、「日本コナモン協会」の代表による「粉もん指南」である。 大学の卒業論文をベースにした『たこやき』で注目された著者は、以来、たこ焼きを初めとするニッポンの粉もんを探訪し、調査を重ねてきた。 コメのご飯=粒食なら、「粉もん」とは、広くは製粉された粉を使う食べ物全般=粉食を指す。が、本書では、たこ焼きやお好み焼き、うどんにおやきなど、多くは小麦粉を用いた「粉食」を主に扱っている。 関西で定着した「粉もん」という呼称が全国に拡がったのは、それほど古い話ではないらしい。具体的にはバブル崩壊後、地域おこしの材料として手軽なローカルフード、つまり土地に伝わる粉もんが、各地で再度注目されるようになっていった。