京都ほど謎が多い都市はありません。それは京都が時代の流れに順応しながら再生し続けてきた都市だからです。京都を俯瞰して地形に注目すると、京都で起きたさまざまな出来事の理由や過去の町の痕跡が見えてきます。そこで、1200年続く京都の成り立ちから現代までの謎と秘密を「地形」や「地理」の観点から迫り、京都独特の歴史の謎を解き明かす書籍『カラー版 地形と地理でわかる京都の謎』(宝島社新書)から、平安京の謎をご紹介します。 文/青木康、古川順弘 平安京遷都(せんと)の3つの説 明治時代に東京奠都(てんと)が行われるまで、1000年以上にわたって日本の都であり続けた京都。そもそもヤマト王権が誕生したのは3世紀末から4世紀初頭の奈良盆地であり、以降、政治・文化の中心は奈良盆地だった。6世紀末には飛鳥(あすか)京、さらに694年には、日本で初めて、本格的な中国の条坊(じょうぼう)制を取り入れた藤原京が造営さ