希代の美食家として知られる池波正太郎がこよなく愛した料理人がいる。「てんぷら近藤」を切り盛りする近藤文夫。彼は今も、料理人としての技を注ぎ、感謝の心とともに池波宅へおせちを届け続けている。 「てんぷら近藤」のおせち。 おせち料理は1年の健康を祈る先人たちの知恵 おせち料理の起源は、平安時代から朝廷で行われていた節会(せちえ)にあるといわれている。室町時代になると、庶民もお正月に食積(くいつみ)といわれる祝い肴(さかな)を供えるようになり、昆布、勝栗などの乾物を三方という白木の膳に載せて神に捧げた。雑煮などといった正月の食を楽しむようになったのもこの頃だ。江戸時代後半になるとその食積の乾物を戻したり、煮たりして食べるようになっていく。これが、今のようなおせち料理の始まりとなった。 正式なおせち料理は四つの重からなる(現在は三重のおせちが主流)。一の重には春、二の重には夏、三の重には秋、四の重