ポール・デイヴィス著 林一訳 草思社文庫(2011/12). 2003 年刊行のハードカバー「タイムマシンをつくろう」の文庫化. 理論物理学者が書いた真面目な本.大学で物理を勉強した,あるいはさせられた方は,この本の最後の「なぜタイムとラベルを研究するのか」から読み始めるのがいいかもしれない.シュレディンガーの猫のような「思考実験」と言われれば納得だ. 現在,タイムトラベルの研究は理論物理学のコミュニティの中で家内制工業めいたものまでにはなって来ているということである.でも,過去に遡って少女時代の母親を殺したらどうなるかをまじめに議論するあたり,SF との境界はあいまいだなというのが実感. ワームホールをタイムトンネルとするタイムマシンの設計図も載っているが,このカバーイラストのような愛嬌のある代物ではなく,巨大加速器のイメージに近い. 定年してつまならくなったことは,こうしたことを世間話