この事件と出会って、週刊文春誌上でレポートすることが決まった段階で、私は編集者に「いずれ1冊の単行本として発表したい」ということを告げていた。週刊誌での連載経験が少なかったからどういう状況になるのかわからなかったということもあるが、事件の深層にある幾多の人間ドラマを考えたとき、纏まったノンフィクション作品にしなければ自分の役割は済まないだろうと直感していたからだ。 この事件報道が過熱した2月から4月にかけて、あまりに大量の情報が多くの媒体から流されたがゆえに、世間では真実がぼやけてしまった感があった。 佐村河内に18年間も使われていた新垣には、何らかの弱みがあったのではないか。 新垣が真実を暴露した裏には、金銭的なトラブルがあったのではないか。 佐村河内には、少女を好む性的嗜好があったのではないか、等々。 いかにもワイドショー的な推測が、ネットを中心に駆けめぐった。もちろんそれらは、次のヒ