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ブックマーク / tnakagawa.exblog.jp (13)

  • そもそもがんとは何か──番外篇(その5) | team nakagawa

    がんの「基」を数回に分けて解説しています。今回は5回目です。この「番外篇」は、今回で最後となります。(第1回、第2回、第3回、第4回) がんは消えても患者さんは… わが国では、がんの患者さんも治療にあたる医師も、ともかくがんを治すことだけを考えてきました。完治(かんち)はもう無理とわかっていても、亡くなる前の日まで抗がん剤を使ったりするのです。 こんな例がありました。直腸がんの手術後に、肝臓(かんぞう)の転移が見つかった患者さんのケースです。ずっと強い抗がん剤の治療を受けていて、結局は副作用で白血球が減り、感染症で亡くなりました。 解剖をしたときに担当医が患者さんの奥さんに満足そうに「よかった、抗がん剤は効いていました。肝臓のがんは消えています」と言ったというのです。 がんは消えても治療で患者さんは亡くなっている、末転倒です。 治癒率より大切なこと 現在、がんの治癒率(5年生存率)は、

    そもそもがんとは何か──番外篇(その5) | team nakagawa
  • そもそもがんとは何か──番外篇(その4) | team nakagawa

    がんの「基」を数回に分けて解説しています。今回は4回目です。(第1回、第2回、第3回) がん細胞の誕生と転移、そして治療の可能性 おさらいをしておきます。がんは、ある臓器にできた、たった1つの異常な不死細胞が、免疫の攻撃をかいくぐって生き残った結果できるものです。 この細胞がつぎつぎと自分と同じ不死細胞をコピーしていき、どんどん大きくなります。ただし、実際に検査でわかるような「がん」になるまでには10~30年かかることが普通です。 がんは、自分が生まれた臓器から栄養を奪い取って成長しますが、やがて住処(すみか)が手狭(てぜま)になると新天地をもとめて移動したがります。これを水際で捕える「関所」のようなものがリンパ腺(リンパ節)です。 さらに、がん細胞の中には血液のなかに泳ぎだして、新大陸である別の臓器をめざす不埒者(ふらちもの)もいます。こうなると治癒(ちゆ)はむずかしくなります。まだ血

    そもそもがんとは何か──番外篇(その4) | team nakagawa
  • そもそもがんとは何か──番外篇(その1) | team nakagawa

    放射線被ばくパニックに、収束の見通しが立ちません。しかし、私たちは、いったい、何を怖がっているのでしょうか? あるいは、何を怖がるべきなのでしょうか? 脱毛や白血球の減少といった「確定的影響」は、福島原発の近隣を含めて、一般の方々には起こりえません。起こるとすれば、「確率的影響」すなわち「発がんリスクの上昇」です。(ヒトの場合、子孫に対する遺伝的影響は“観察されていません”。) 広島・長崎のデータでも、100ミリシーベルト以下では、発がんリスクが増えたというデータはありません。100ミリシーベルト以下の被ばくでは、がんは増えないということではなく、放射線被ばくよりはるかに発がんに影響を与える生活習慣のなかに、被ばくによるリスクが「埋没してしまう」のです。 だからといって(一部に誤解があるようなので急いで付け加えておきますが)「放射線による多少の被ばくを心配するには及ばない」などと言っている

    そもそもがんとは何か──番外篇(その1) | team nakagawa
  • 福島訪問──その3 土壌・山野草測定の結果について | team nakagawa

    空間線量率に引き続き、福島県を訪問した際に採取した、飯舘村小宮周辺、浪江町津島周辺、南相馬市(鹿島幼稚園・小中学校、八沢小学校、上真野小学校)の土壌サンプルおよび飯舘村で採れた山菜やほうれん草、浪江町で採れたふきのとうの放射能についての結果を報告いたします。 【ゲルマニウム検出器及び広窓GM管サーベイメータによる測定】 土壌や作物に含まれる放射性物質の種類と量を調べるには、放射性物質から発せられる“ガンマ線のエネルギー”を同定できるゲルマニウム検出器を使います。放射性ヨウ素131は崩壊によって、364 keV(キロエレクトロンボルト)のガンマ線を放出します。放射性セシウム134と放射性セシウム137はそれぞれ604 keVと661 keVのガンマ線を放出します。エネルギーの違うガンマ線の量を調べることで、土壌や作物に含まれる放射性物質の種類と量を調べることができます。 【ゲルマニウム検出器

    福島訪問──その3 土壌・山野草測定の結果について | team nakagawa
  • お願い | team nakagawa

    マスコミ関係者からの電話による問い合わせが多く、診療の妨げになっています。 福島での一連の調査に関する、取材を目的としたお問い合わせは下記アドレス までメールにてお願いします。その際には、お手数ですが、問い合わせの趣旨もご記入ください。 team_nakagawa2011@yahoo.co.jp よろしくお願い申し上げます。

    お願い | team nakagawa
  • 福島訪問──その4 対策に対する提案 | team nakagawa

    国際放射線防護委員会(ICRP)レポート111の解説に記載したように、“線量の管理”を行う際には、ある地域における「平均的な個人の振る舞いとその被ばく量」を想定し、対策を立てることは適切とは言えません。個人や生活習慣が似ているグループ毎に行われるべきです。その理由には、屋内外に滞在する時間の違いや放射線量の局所的な汚染の分布、生活の違いなどが挙げられます。 今回の訪問により得られた知見から、地域住民の皆さん、政府や自治体に、対策していただきたい事例(既に提案しています)を以下に挙げます。 1. 警戒区域・計画的避難区域の設定について 政府は4月21日、22日付の報告で原発20km以内を一律警戒区域に、20-30km圏内の一部地域を計画的避難区域に設定しました。 http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/shiji_1f.html http://ww

    福島訪問──その4 対策に対する提案 | team nakagawa
  • team nakagawa : 福島訪問−その2 空間線量率測定の結果について

    東大病院で放射線治療を担当するチームです。医師の他、原子力工学、理論物理、医学物理の専門家がスクラムを組んで、今回の原発事故に関して正しい医学的知識を提供していきます。 Twitter:team_nakagawa2011年4月29日にteam_nakagawa 5名(医師3名、物理士2名)で福島を訪問しました。福島市にある福島大学附属中学校、飯舘村草野周辺、浪江町津島周辺、南相馬市(市役所、鹿島幼稚園・小中学校、八沢小学校、上真野小学校)の土壌や空間線量率の測定を行い、地域の代表の方には、データに基づいた報告や提案を始めています。日は、実際に私たちが4月29日に観測した空間線量率についてご報告します。 1. ワンボックス車に線量計をつけて福島市~飯館村、浪江町、南相馬市、南相馬~福島市の空間線量を測定しました。 2. 福島市および南相馬市のいくつかの学校について空間線量を測定しました。

  • 放射能はうつるのか? | team nakagawa

    福島県から避難してきた子供たちが、避難先で偏見を持たれるケースが生じています。一時帰宅された方の受け入れを、避難所などで問題にするケースもあるようです。拒否された方々は、深い心の傷を負うことでしょう。また、心ない言葉をかけた方々のことを想像すると、その人々が、よくわからない放射能の不安から、過剰な反応をしてしまうことも理解できます。 放射線や放射性物質は目で見ることができず、一見影響も全く見えません。このことが不安を大きくしてしまう原因の一つであると思います。そして、放射能への偏見や風評が広がることが被災地の復興・復旧に大きな影響を及ぼします。今私たち(特に大人)は、放射線を“正しく”怖がることが必要です。 私たちteam_nakagawaは、放射線治療のチームです。患者さんに治療として与える放射線は、福島第一原発敷地内で観測されている放射線よりも何倍も強力です。ですが、患者さんの体の外か

    放射能はうつるのか? | team nakagawa
    tartvf
    tartvf 2011/04/16
  • がんの放射線治療──その2 全身照射 | team nakagawa

    私たち、東大病院放射線治療部門のチームでは、白血病など「血液のがん(注1)」の骨髄(こつずい)移植を成功させるために、体全体に放射線を照射する全身照射を行っています。 注1: 「がん」には、胃がんや肺がんのように臓器にできる「がん」の他に、白血病のように血液の細胞から発生する「がん」があります。このような血液の細胞由来の「がん」を「血液のがん」と呼びます。 放射線に対する強さは臓器によって異なります。骨髄や腸管のように放射線の影響を受けやすい臓器と、筋肉や神経のように放射線に対して比較的強い臓器があります。一般的に、放射線治療では放射線に弱い臓器にあたる放射線を最小限にし、がんの病巣(びょうそう)に集中して放射線を照射することで、体に優しいがん治療を行っています。 骨髄移植の前に行う全身照射は、体全体に均等に放射線を照射する点で他の放射線治療と大きく異なります。全身照射の目的は、白血病細胞

    がんの放射線治療──その2 全身照射 | team nakagawa
  • 放射性セシウムと放射性ストロンチウム(4/8まとめ) | team nakagawa

    福島第一原子力発電所の事故から間もなく4週間が過ぎようとしています。大気中の放射線量は、ほとんどの地点で減少か横ばいとなってきました。 これまで、観測されていた放射線量の主な原因は、放射性ヨウ素131(I-131)でした。I-131の半減期は8日です。3/15以降、放射線の大きな漏洩がないと考えられるので、I-131から生じる放射線量は約1/8まで減少しているはずです。 (早野龍五先生の連続tweetを参照;http://togetter.com/li/119437) 今後も原子炉からの放射性物質の大量飛散が生じなければ、環境や人体に及ぼす影響について、今後注意が必要となってくるのが、半減期の長い放射性セシウム(注1)と放射性ストロンチウムです。この影響を検討し、必要な対策を十分に練っておく必要があります。 注1: 「Cs(セシウム)による被ばくの影響について」を参照下さい。 放射性セシウ

    放射性セシウムと放射性ストロンチウム(4/8まとめ) | team nakagawa
  • がんの放射線治療—その1 イントロダクション | team nakagawa

    私たち“team_nakagawa”は、東大病院で、がんの放射線治療を行っているチームです。私たちの業の放射線治療を直接に通して、福島原発の事故で懸念されている放射線被ばくの問題を考えてみたいと思います。 “放射線治療シリーズ”の初回は、総論にあたる「イントロダクション」です。このあと、前立腺がん、白血病、甲状腺がん、などの放射線治療について、順次、解説をしていきます。一見、関係が薄いように見える、放射線治療と原発事故ですが、密接な関係があることを知っていただければと思います。 * * * * * * * * * 放射線は細胞内のDNAに傷を作ります。DNAは細胞を作る設計図面のようなものですから、DNAに傷が作られると、その細胞は生きてゆけなくなる可能性があります。 ただし、DNAに書き込まれた設計図にも重要な部分とそうでない部分があり、実は、重要な部分はごくわずかしかありません。たと

    がんの放射線治療—その1 イントロダクション | team nakagawa
  • 「暫定規制値」とは | team nakagawa

    ニュース等の報道で耳にする機会が多くなった、飲物摂取制限に関する「暫定(ざんてい)規制値」の意味、また「暫定規制値」を決める根拠について多数のご意見•ご質問を頂いています。 ここでは特に、放射性ヨウ素の暫定規制値がどのように決められているかを文献に沿って、私たちが知りうる範囲でなるべくわかりやすく解説します。 ※なお、参考にした文献は以下のもので、引用した数値もこの文献から引用しています。 ・「飲物摂取制限に関する指標について」(平成10年3月6日原子力安全委員会原子力発電所等周辺防災対策専門部会環境ワーキンググループ) ・「日の防災指針における飲物摂取制限指標の改定について」(須賀新一、市川龍資、保健物理35(4),449-466(2000)) これらは、国際放射線防護委員会(ICRP)、国際原子力機関(IAEA)等の考え方に基づいています(詳細は以下を参照ください)。 ・国際放

    「暫定規制値」とは | team nakagawa
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    がんの「基」を数回に分けて解説しています。今回は5回目です。この「番外篇」は、今回で最後となります。(第1回、第2回、第3回、第4回) がんは消えても患者さんは… わが国では、がんの患者さんも治療にあたる医師も、ともかくがんを治すことだけを考えてきました。完治(かんち)はもう無理とわかっていても、亡くなる前の日まで抗がん剤を使ったりするのです。 こんな例がありました。直腸がんの手術後に、肝臓(かんぞう)の転移が見つかった患者さんのケースです。ずっと強い抗がん剤の治療を受けていて、結局は副作用で白血球が減り、感染症で亡くなりました。 解剖をしたときに担当医が患者さんの奥さんに満足そうに「よかった、抗がん剤は効いていました。肝臓のがんは消えています」と言ったというのです。 がんは消えても治療で患者さんは亡くなっている、末転倒です。 治癒率より大切なこと 現在、がんの治癒率(5年生存率)は、

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