日本史では元寇と呼ばれるフビライハンによる日本侵攻時、当時の朝鮮<高麗(こうらい)>王朝が被った甚大な負担と悲劇を描いたものである。 まず、朝鮮の歴史を通覧しておこう。 高麗は初めて半島を統一した新羅(しらぎ)を936年に継承した二つ目の統一王朝だ。新羅を冊封した唐が907年に滅んで中国への従属が途切れたのは300年余だけ。運悪く蒙古の勃興期に遭遇、遂に1258年、蒙古に服属させられる。爾来、元・明・清にわたる約550年間、朝鮮民族が大陸の異民族に服属する歴史が続いた。清のあとは独立を目指したものの、大陸に替わる明治日本の支配を受け、日本が去ったあとは再び大陸による支配が朝鮮北部に残っている。繰り返すが、朝鮮民族が異民族支配から逃れえたのは僅か300年余しかない。この経緯が今も東アジアに大きくのしかかっていることを頭に入れておこう。 解説の篠田氏は<自然の影響を限定された空間の中で人事