黒沢明氏の死は全世界の人々から惜しまれ、海外のニュースでも大きく取り上げられた。これは日本の映像産業が、かつては世界をリードしていたことを改めて思い起こさせたが、ひるがえって衰退しきった現在の日本映画や、画一的なワイドショーやバラエティで埋まったテレビを見ると、その落差に暗然とせざるをえない。 一般には、映画はテレビの登場によって衰退したと思われているが、米国では映画は今や最大の輸出産業の一つであり、こうした映像コンテンツ(内容)の分野は、今後の多メディア化における中核産業と見なされている。ところが日本の映画業界は閉鎖的な系列興業システムによって自滅し、NHKはサラリーマンによる自社制作を続け、民放は劣悪な制作条件でプロダクションを搾取してきたため、日本にはまともな映像作家がほとんど育っていない。この人材の貧困がボトルネックとなり、通信衛星では番組の不足のために中継器が埋まらない状態である