米国を中心とした電子書籍市場の急拡大を受け,盛り上がりを見せている電子ペーパー市場。その主役とも言えるのが,米E Ink社ではないでしょうか。ご存じの通り,世界で現在販売されている数10種類もの電子書籍端末のほとんどに,同社の電子ペーパーが採用されています。電子ペーパーには,さまざまな方式がありますが,E Ink社の電気泳動方式(液体中の粒子を移動させて表示する方式)は,もはや電子ペーパー技術の代名詞と言っても過言ではありません。 しかし,電気泳動方式の電子ペーパーの歴史をたどると,その元祖は決してE Ink社ではないのです。実は,松下電器産業(現・パナソニック)が1970年代前半に世界で初めて実用化に成功しました。松下電器が開発に着手したのは1968年。当時,電子写真の液体現像液を開発していた同社の太田勲夫氏が,絶縁性の液体に粒子を分散させるという現像液の技術をディスプレイに応用したのが