「世界の中の日本」にむけた現代史 ――細谷雄一『戦後史の解放Ⅰ 歴史認識とは何か 日露戦争からアジア太平洋戦争まで』(新潮選書) 佐藤卓己 正しい歴史認識に必要なのは、歴史的リアリズムである。未来の平和だけを想いえがいていては、国際社会の現実を見失う。さりとて、過去の戦争だけを見つめていては一歩先に進み出せない。バックミラーで後方を見ながら注意深く前に進むこと、そうした歴史的リアリズムが「戦後七十年」のいま、私たち日本人に切実に求められている。 ちょうど国会では集団的自衛権行使にむけた「安保法制」が審議中だ。中国の海洋進出や朝鮮半島の不安定化など、日本をとりまく安全保障環境は厳しさを増している。一九三〇年前後の危機をアナロジーとする議論は珍しくない。ただし、状況が反転していることも忘れてはならない。当時、軍事的に暴走する危険性があったのは日本だが、いまは中国や北朝鮮である。そうした危機への