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  • 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 - 火と血と鉄、そしてミューズたち - 1953ColdSummer

    『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 - 火と血と鉄、そしてミューズたち - 1953ColdSummer マッドマックス 怒りのデス・ロード MAD MAX: FURY ROAD 2015(2015)/オーストラリア/R15+ 監督/ジョージ・ミラー 製作総指揮/イアイン・スミス/グレアム・バーク/ブルース・バーマン 脚/ジョージ・ミラー/ブレンダン・マッカーシー/ニコ・ラソウリス 音楽/ジャンキー・XL 出演/トム・ハーディ/シャーリーズ・セロン/ニコラス・ホルト/ヒュー・キース=バーン/ロージー・ハンティントン=ホワイトリー/ライリー・キーオ/ゾーイ・クラヴィッツ/アビー・リー/コートニー・イートン/他 お前のMADが目を覚ます  さて、ついにこの日が来たかとクソ暑いのにレザーで上下をキメて、インターセプター(ピンク色のママチャリ)に乗ってシネ・コンに赴いた。ほで、スチャッとショ

    『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 - 火と血と鉄、そしてミューズたち - 1953ColdSummer
  • 競争社会をゼロサム・ゲームにしたのは誰? - 『ヒューマン・レース』 - 1953ColdSummer

    ヒューマン・レース THE HUMAN RACE 2013/アメリカ/ 監督/ポール・ハフ 出演/ポール・マッカーシー=ボーイントン/エディ・マッギー/他 ※ネタバレ有  世の中にはいろいろな人が居ます。  お年寄り、妊婦、身体の不自由な人、ネオナチ、無垢な子供たち……。  さした人たちを、別け隔てなくぶち殺す旨のゼロサム・ゲームがこのたびの『ヒューマン・レース』でありますが、かかる非道な行ないをお天道さまが見逃すわけもなく、というか含んで言うが、見逃していないといえば、まあ、見逃していないっつうのは最後まで観れば分かるので、これからも日曜日は市場へ出かけ糸と麻を買ってくるがごとき質素な生活をテュリャテュリャと続けようと思いました。  ところで質素な生活にも飽きたのでこうして筆を執る次第なのだけれども、筆を執ったは良いが、達磨に目を入れたり、自分の全身に写経をするばかりで稿がいっかな進ま

    競争社会をゼロサム・ゲームにしたのは誰? - 『ヒューマン・レース』 - 1953ColdSummer
  • 『ダークナイト ライジング』 そして伝説が、壮絶に、終わった - 1953ColdSummer

    ダークナイト ライジング THE DARK KNIGHT RISES 2012/アメリカ 監督:クリストファー・ノーラン 出演:クリスチャン・ベイル他  極力ネタバレは控えておりますが、作品の内容に触れている部分もあるので、というか結構触れているので、神経質な方は作ご鑑賞後に稿を読んでいただけると有難いです。  冒頭、スペキュタキュルあっ噛んだ、すみません、わたし滑舌が悪いのでね。で、冒頭、スペクタクルに富んだ、あっこれは「富んだ」と「飛んだ」をかけているのですけどね、ハイジャックシーンを観てですな、わたしは悲憤慷慨し、両掌で顔を覆うと、訳の分からぬことを喚き散らしながら座椅子の背もたれにがんがん後頭部を打ち付けた。何ということが起きてしまったのだ。わたしは今何を目の当たりにしているのだ。これは、これでは、これだと、このまま行くと、まんま、『バットマン ビギンズ』そして『ダークナイト』

  • 『バトルシップ』 ユニバーサル100周年記念は海戦ゲームでどうですか - 1953ColdSummer

    バトルシップ BATTLESHIP 2012/アメリカ G 監督:ピーター・バーグ  傍目八目などと申して傍観者の方が、当事者よりも適切な見通し・判断を下せる、なんてなことを言うが、はは、これは中々に質を突いた言葉で、わたしもついカッとなりかけたときには、傍目八目、傍目八目、と、ぼそぼそつぶやいて頭を冷却し、おかめうどんをして正気を保つなどして、適切な見通し・判断を下せるように心がけておるのであるが、しかし、これは絵に描いたようには上手くは行かない。就中、ゲームなどしておるときには傍目八目の信念もどこやら、たりゃりゃりゃりゃ、あぱぱぱぱ、黄泉の国に蹴落としたるわい、われぇ、と、まあ、傍から見ると気がおかしくなってしまった人のようになってしまうわけだが、そうしてわたしの気をおかしくしてしまったゲームのひとつに、海戦ゲームというものがある。これはわたしが中等学校に入学したばかりのころの英語

  • 『ヒミズ』 闇の中を這いずっているすべての若者へ - 1953ColdSummer

    ヒミズ 2012/日 PG12 監督:園子温 原作:古谷実 『ヒミズ』  新訳Zガンダムのラスト(『星の鼓動は愛』)を観たときには、ああ、これでやっとわたしはZガンダムの呪縛から解放されたのだ、僥倖、万感の思いが胸に飛来せしと1人でほたえていたものだが、2012年新春初の映画である『ヒミズ』を観て、またわたしは、劇場で1人ほたえる羽目になり、嗚咽、痙攣、精神崩壊などを併発し、「あぱぱぱぱ」となっているところを病院に搬送されたのだが、この『ヒミズ』の感激、情動などをブログを通じて世界に広めたいがため、病院から脱走してきた。半ズボンで、薄笑いを浮かべながら。  原作『ヒミズ』には並々ならぬ思い入れがあって、それは例えば、若いが故に胸中に溜る澱の如きものであるとか、他人から見れば意味不明であろう価値観と概念のせめぎ合いであるとか、地球を逆回転させて時間を戻したときにはどうしようかと思ったことで

  • 『ゴーストライター』 知りすぎた男、彼が告発しようとしたものは―― - 1953ColdSummer

    ゴーストライター THE GHOST WRITER 2011/フランス/ドイツ/イギリス G 監督:ロマン・ポランスキー 主演:ユアン・マクレガー 原作:ロバート・ハリス 『ゴーストライター』  わたしは、今、反省では足らずして猛省しておるのである。  何がそこまでわたしを追い詰めたのかというと、自身にかすかに残った後悔、詐欺の片棒を担いでしまった罪悪感、そうしたものがわたしを苛み、何やら漠然とした苦痛となって、夜な夜なわたしを苦しむるのである。  何ですと? お前の精神状態なんざ知ったことか、こるぁ、ですと? まあ少しく黙ってお聞きなさい。  もう耐え切れなくなったわたしは、ここに、ひとつの告発を行なおうと思う。  わたしはトップダラー禍津ではありません。プリスケン松尾という者です。  弊ブログ、『1953ColdSummer』の記事は、トップダラー禍津氏のゴーストライターとして、すべて

  • わたしは断固として「チンチン」と呼ぼう 『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』 - 1953ColdSummer

    タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密 THE ADVENTURES OF TINTIN: THE SECRET OF THE UNICORN 2011/アメリカ G 監督:スティーヴン・スピルバーグ 製作:ピーター・ジャクソン他 脚:エドガー・ライト他 原作:エルジェ 『チンチンの冒険』を観てきたのである。  何に、或いは誰に配慮しているのかは知らないが、原題『TINTIN』を無理やり『タンタン』などと呼ばせるようなことは、チンチン君ならび原作者のエルジェ氏に対してこれ失礼極まりなく、また、スピルバーグのチンチン愛にハチミツをぶちまけるが如き思想の顕現であるとわたしは考えるので、以後、弊ブログでは『チンチン』で呼称を統一しようと思う次第。  チンチンの冒険。ユニコーン号の秘密。こうしたネーミングが持つ、一種の魔力のようなものを感じたことがあるだろうか。  過日、わたしは家の押入れの整理をし

  • ミクロコスモスの不思議な終焉。『DOGTOOTH』 - 1953ColdSummer

    DOGTOOTH (日公開未定) Κυνόδοντας(Kynodontas) 2009/ギリシャ R18+ 監督:ヨルゴス・ランティモス  産まれたときから家の敷地外に1歩も出ることなく、そのまま家の外を知らずに育った、1人の息子と2人の姉妹。  輸入盤で鑑賞。  親子5人で暮らしているギリシャ郊外の邸宅。そこにはハイティーンであろう少年少女3人が、無邪気に駆けり、プールで泳ぎ、飛行機の玩具を取り合い、年齢にしては幼稚過ぎる遊戯に耽っていた。彼らは学校に行くでもなく、友達を呼ぶでもなく、永遠に続くかと思われる「家の中での時間」に身を委ねていた。  家から外出できるのは父親だけ。父親だけが仕事に行き、買い出しをし、「外」を連想させる品物のラベルを剥いでいる。父親と母親は子供たち3人を産まれてから1回も家の敷地外に出したことは無い。そして、自分たちでカセットテープに「外」に関係ある言葉を吹

  • 人は皆、繋がる事ができる……『THE HUMAN CENTIPEDE(ムカデ人間)』としてな! - 1953ColdSummer

    THE HUMAN CENTIPEDE (邦題『ムカデ人間』) THE HUMAN CENTIPEDE (FIRST SEQUENCE) 2011/オランダ・イギリス R15+ 監督:トム・シックス  今ではもう見る影も無いが、わたしが子供の折には、特撮番組で、漫画で、そして映画で登場した、様々な「◯◯人間」というクリーチャーが幼年誌などでたびたび特集され、またインチキくさい豆のたぐいでデッチ上げられ、とてもこわかった記憶がある。その「恐怖! ◯◯人間!」という文字が筆で殴り書きしたような斜体でこれがまたこわく、そして「◯◯人間」の「◯◯」の部分には、やたらおぞましい語句――ナメクジだとかキノコだとか――が当てられており、それら不快なものと人間を合成するという発想、技術、結果に幼少時のわたしは心底ブルっていたのである。夜ひとりでトイレにいけなくなり、しょうがないので窓を開けてそこから飛ば

  • 『SUPER 8/スーパーエイト』という名前の継ぎ目だらけの被造物。 - 1953ColdSummer

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  • 『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』彼らの名はエリック、そしてチャールズ。 - 1953ColdSummer

    X-MEN:ファースト・ジェネレーション X-MEN: FIRST CLASS 2011/アメリカ 監督:マシュー・ヴォーン 製作総指揮:スタン・リー 原案:ブライアン・シンガー   以前、さくらももこが、手が届かない場所に落ちている物を拾おうとするときには最後に念力を試してみる、なんてことを自著に書いてあったのを読んで、くわっ、と蒙を啓かれた気分になり、よしそうしよう今度からわたしもそうしようと、部屋に置いてあるリモコン、孫の手、道端に落ちてある100円玉、水子地蔵に供えてある蜜柑、等々、これらを拾おうとするときには目ェかっ開き充血させ、両の掌(たなごころ)を対象物に向け、てやっ、てややっ、と念力を放つようにしているのだが、それが功を奏し、物理法則をねじ曲げて対象物がふわりと宙に浮いたなんて経験は残念ながら一度も無い。あるときなどは、ぼろっちい身なりをした、だが瞳は阿羅漢が如きこじきの人

  • 混沌が支配する。『アンチクライスト』 - 1953ColdSummer

    アンチクライスト ANTICHRIST 2011/デンマーク・ドイツ・フランス・スウェーデン・イタリア・ポーランド R18+ 監督:ラース・フォン・トリアー  無宗教者、無神論者を気取ったり、悪魔主義に傾倒したりするという行為は中々に矛盾を孕んでいるものだ、というのはいちいち自分が指摘する間でもなく、無宗教者、無神論者を気取ったり、悪魔主義に傾倒したりしている人間自らが一番に自覚しているであろうと思われる。  というのも、砕いて言うと、無宗教や無神論は「在る」ことを前提とされているものを「無い」と言い張る論法のひとつであって、悪魔主義なんかも、裏を返せば神様を信じている証左に他ならず、片方を立てればもう片方も立ってしまう。このパラドキシカルな矛盾が反キリスト者たちの愉しみであり、克つべき主題でもある。  さて、『アンチクライスト』だが、これはその題名とは裏腹に、反キリスト思想を大々的にフィ

  • 『ブラック・スワン』その狂気は、両腕を漆黒の翼に変えて――。 - 1953ColdSummer

    ブラック・スワン BLACK SWAN 2011/アメリカ R15+ 監督:ダーレン・アロノフスキー 原案・脚:アンドレス・ハインツ 主演:ナタリー・ポートマン  執念、執着というものは何とも厄介なものであって、例えば、仏教などではワガに対する我執を克服することから第一歩が始まる、なんてことも言われるように、みみっちく小銭を皮算用したり、いま歩いてきた道を引き返して、落ちていた100円玉をやっぱり拾ったりすることは、とても卑しい行為とされ、と同時に、たかが100円玉に対するうぬのチンケな執着心を露呈したこととなり、周囲に人が居った場合などは、100円にみみっちく執着するとんだ道化として哂われかねんものなのである。おほっ、今あいつ落ちてる100円拾ったぜ、おほほっ。  だが、じゃあチンケでない執着とは何だ、100円ではなく万券狙えということか、よっしゃ一丁武装強盗でもこましたろか、タラちゃ

  • これは本当に人間が観ていいものなのか。『A Serbian Film』 - 1953ColdSummer

    A Serbian Film (日公開未定) 2010/セルビア R18+ 監督・主演:スルジャン・スパソイエビッチ   「この世には神も仏もないのか! おおジーザス!」といった、たいへん意味の分からない口上にももはや創作物上でしかお目にかかれぬようなご時世ではあるが、まあ結論から言うと、当然のようにこの世には神も仏も居らんのであって、ワインやパンを自分の血肉に見立てさせて信者に喰らわせる変態じみた伴天連の大将の存在なども、それこそ創作物上のものに過ぎんのである。  だが、まぁ、そうと頭で理解はしていても、やはり何らかの超常的な力、大いなる意思に身を委ね、救いを求めたいという気持ちも分からんではない。かくいう自分も給料日前にはよくそうなる。  ……って、それは大宇宙の法則を、都合良く自分の意図する方向へとねじ曲げんがためのワガママであって、普段から信仰の無い者が誰に助けてもらえるのか、ま

  • 『冷たい熱帯魚』お前もボディを透明にしてやろうか! - 1953ColdSummer

    冷たい熱帯魚 COLDFISH 2011/日 R18+ 監督:園子温 共同脚:高橋ヨシキ 『アンチクライスト』と並んで「2011年の最高の問題作!」と公開前から高らかに謳われていた園子温監督作品。  埼玉愛犬家連続殺人事件をベースに、他の実録事件の要素をも練り込み、或いは圧縮し、同監督の『愛のむきだし』と同じく長尺な上映時間ながらも体感時間はジェットコースター並に早く感じる。それ即ち、もう少しこの作品世界に浸っていたい、淫していたい、という作品の持つ求心力の強さの証左に他ならない。  血しぶきと肉片、憎悪と金欲肉欲、狂気じみた人生哲学(≒殺人の美学)といったグロテスクなイメージをこれでもかと詰め込んでおきながら、何故に作は普遍的な求心力を誇示することが出来たのか? 思うに、それは善悪の彼岸だの倫理感だのとそういった「一般常識」よりも、とにかく殺人鬼・村田役を勤めたでんでんのトーク/ア

  • 『エンジェル ウォーズ』に在るもの、そして無いもの。 - 1953ColdSummer

    エンジェル ウォーズ SUCKER PUNCH 2011/アメリカ・カナダ G 監督:ザック・スナイダー 主演:エミリー・ブラウニング  『エンジェル ウォーズ』という邦題に非難轟々だったものの、セーラー服姿のパツキンのチャンネーがポン刀と機関銃でサムライ大魔神やナチスのゾンビやドラゴンやロボットをなぎ倒すという、ボンクラフルスロットルなヴィジュアル・イメージから大いに期待されていた原題『SUCKER PUNCH(サッカー・パンチ。「不意打ち」の意)』がついに邦上陸。  作が初のオリジナル長編となるザック・スナイダーはこう語る。 「これは神話であり、自分がクールだと思うものを詰め込んでいる」と。  こうした自己主張を受け、鼻息荒く映画館に足を運ぶボンクラどもにまずは拍手を贈りたい。ましてや、相手はこれまでに『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『ウォッチメン』を送り込み、我々を唸らせてきたザッ

  • その哀しきレッテル『悪人』 - 1953ColdSummer

    悪人 2010/日 PG12 監督:李相日 原作:吉田修一『悪人』  正義と邪悪がどうのこうの、善悪の戦い、なんて二項対立の概念を、もうずいぶんと幼いころから映画ゲームによって刷り込まれてきた。おおよそ、悪い者は倒されて、善き者は凱歌を上げ幸福を手にする。様々な悪い者――悪人――の末路を、フィクションを通じ、何度も何度も目にしてきた。  悪いヤツにも悪いヤツなりの言い分があって……とか、そもそもそれは当に悪だったのか? とか、そういった「悪人視点」がメジャーになってきたのは比較的最近のことだろうと思う。価値観の多様化という錦の御旗のもとに、背徳的かつ退廃的なエビル・デザインは更に細分化され現在に至る。 『悪人』は、つまるところレッテルの話である。  李相日監督は、『スクラップ・ヘブン』に於いて「社会に対する不適格者」の実存を描くことに力量を発揮し、そして、今回の『悪人』に於いては

  • 『白いリボン』 その時代に、聴こえてきたのは魔物の足音――。 (2010/ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア G 監督:ミヒャエル・ハネケ) - 1953ColdSummer

    1953ColdSummer : 『白いリボン』 その時代に、聴こえてきたのは魔物の足音――。 (2010/ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア G 監督:ミヒャエル・ハネケ) 作品内に於いて、神の不在をスケッチにまとめあげておきながら、神への賛美歌を以ってラストとするその痛烈な皮肉に、ハネケの不変なる作家性を再確認できた。 「白いリボン」とは純潔、純真の証であり、また、大人から子供へ強制的に与えられる「罰」でもある。だが、そのリボンには子供を束縛する力は無かった。故に、大人の「子供にはこうあって欲しい」という強制力は強制力として機能していないことが、早い段階で明かされる。それこそが、この謎多き作品の数少ない明確な「ルール」であり、また推理の材料として我々の前に提示されているのである。 『白いリボン』を観てきた。  第一次世界大戦前の、アイヒヴァルトというドイツの架空の村を舞台とした暗

  • 『月に囚われた男』 その月面での出来事はまるでデヴィッド・ボウイの歌の世界。 (2010/イギリス 監督:ダンカン・ジョーンズ) 1953ColdSummer

    星新一や筒井康隆のショートショートや、テレビ番組『トワイライト・ゾーン』に夢中になったことはないだろうか? 『パタリロ!』や『アウターゾーン』や藤子不二雄のSF短編集の単行を集めて読み返したことはないだろうか? 季節の節目に『世にも奇妙な物語』にチャンネルを合わせた記憶はないだろうか?   これらの問いにひとつでも「ある」と答えられたあなたは幸福である。何故なら、あなたは作『月に囚われた男』を5割増しで楽しめるのだから。    自分は良くも悪くも社会性を保って生きているので、詳細を上手く説明することができないのだが、孤独というものは人間をとても不安定にするものらしい。周囲の人間に合わせたり流されたりしている方が不安定なんじゃないのか、とも思うが、それとはまた違う次元で「ひとりぼっち」というものは人間をどこかおかしくさせ、関係性から解き放たれたが故の恐怖を喚起する、らしい。  作『月に

  • 『悪魔を見た』 怪物と闘う者は自らが怪物と化さぬように心せよ。 (2011/韓国 R18+ 監督:キム・ジウン) - 1953ColdSummer

    1953ColdSummer : 『悪魔を見た』 怪物と闘う者は自らが怪物と化さぬように心せよ。 (2011/韓国 R18+ 監督:キム・ジウン) 確かに作は、表面的に見れば「復讐は報復を生み、暴力は連鎖する。ああ虚しい」といった文脈上に収まるノワールだ。徹底的に暴力、背徳的な描写がエクスプロイトされた作には、直接的な殺傷行為という横糸と、観念的な「怪物と闘う者自身が怪物と化してゆく」という縦糸で作品全体が織り込まれており、怪物相手に復讐を果たしていく過程で、また自らも深遠に覗き込まれ……というニーチェのアレを、至極唯物的に弁証している。物質――身体が来的なものであって、そこに与えうるダメージ、つまり殺人や傷害といった行為がまずあって、生首、死体の山、下痢便(これがまたリアルで……)といったガジェットは、その存在から有機的に意識を発展させていく。凶行へ、復讐へと。 『悪魔を見た』に於