『銀河鉄道の夜』といえば、明治から昭和にかけて活動した童話作家、宮沢賢治の代表作のひとつだ。日本人のほとんどが読んでいるといっても過言ではなく、読んでいなくても名前くらいは知っているだろう。松本零士の代表作『銀河鉄道999』など、後世の芸術作品にも大きな影響を与えている。書店に行けば、文庫や絵本のコーナーの定番だ。表紙には夜空を駆ける蒸気機関車と、その後ろに連なる客車が描かれる。 しかし、ほとんどの人が気づいていない、あるいは見落としている重大な事実がある。この作品で、主人公のジョバンニと友人カムパネルラが乗った列車、じつは蒸気機関車の牽引ではなかった。電気機関車またはディーゼル機関車だったようだ。 解説する前に簡単におさらいしておくと、『銀河鉄道の夜』の主人公はジョバンニ。引っ込み思案のジョバンニは、学校で天の川の正体を答えられず、同級生と星祭にも行かない。母は病気で、父は漁師でめったに