脱炭素時代の「夢の燃料」と期待される水素。石油製品のように世界中で使われるようになるには、サプライチェーン(供給網)づくりが欠かせない。米国、欧州、中国、そして日本の4軸を中心にじわりと広がる水素供給網をひもとく。供給網とはモノを「つくる」「運ぶ・ためる」「売る」「使う」の4つの目的をつなげる大きな商流を指す。水素の供給網を広く、太くする試みが世界各地で始まっている。「つくる」の世界3強は米エ
これまでのディーゼルエンジン開発の常識に逆らい、排ガス問題を改善できる低圧縮化に挑んだマツダ。常識を打ち破れたのはなぜか――。「マツダのディーゼルエンジンは排ガス不正の独VWとどこが違うのか?」(http://president.jp/articles/-/17515)の後編です。 パワートレイン開発本部パワートレイン技術開発部長・寺沢保幸は次のように語っている。 「圧縮比を下げる、開発の目標はこれです。ディーゼルエンジンの基本は、燃料と空気をよく混ぜることであり、よく混ぜればそれだけ排気ガスの浄化性能が向上します。よく混ぜるためにはどうするか? 圧縮比を下げてやるのが有効な手段です。なぜなら、圧縮比を下げてやればそれだけ混合気がよく混じり合うための時間を長くできるからです」 寺沢は、このディーゼルエンジンの開発が始まった2006年当時、パワートレイン先行開発部の主幹を務めていた。そこで、
マツダの社員はみな同じことを言う ――私は取材していて、マツダの人がみな同じ事を言うのに驚いています。これが例えば「顧客第一主義」みたいな標語なら同じ事を言っても不思議はないんですけど、藤原専務がさっきおっしゃった「よそと関係なく、掲げた理想に向かって開発するだけです」みたいな意味のことを、それぞれが自分の言葉や表現で言うんですよね。失礼ながら最初は変な宗教みたいでちょっと気持ち悪かったのですが(笑)、本来会社にとって、自分たちがそれぞれの持ち場で何をやるべきなのかを社員全員が分かっているのは大きな強みだと考えると、これはちょっとマツダ恐るべしと思っています。もうちょっとさかのぼって良いですか? 国内販売網を5チャネル化して失敗するより前はどうだったんでしょうか。 【藤原】(5チャネル化は)1980年代後半からですね。その頃われわれの世代は、言われたことをやるだけで精一杯。仕事が山のように
四代目プリウス、C-HR……近頃、トヨタのクルマが良くなってきている。豊田章男社長は「もっといいクルマづくり」という言葉を連呼しているが、その手本としているのは、実は、マツダのモノ造りだ。転機となったのは2013年の「アクセラ・ハイブリッド」。トヨタのエンジニアを迎えて行った試乗会で起きた、ある“事件”とは……。 ■“世界のトヨタ”がショックを受けた、マツダの手法 トヨタ自動車は世界に燦然と輝くエクセレントカンパニーだ。しかし、そのエクセレントカンパニーぶりに相応しいほど製品が素晴らしかったかと言えば、残念ながらそうではなかったと言わざるを得ない。 2008年のリーマンショックで大打撃を受けたトヨタは、改めてトヨタをリビルドする改革を始めた。企業体質を強靱化し、いかなる経済ショックにも負けないトヨタを実現すべく、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ http://ww
「乗用車ハブベアリングで世界シェア1位の25%」というNTN(大阪市)は、2018年3月に創業100周年をむかえる。もともと For New Technology Network(新しい技術で世界を結ぶ)の頭文字からの社名だったが、この節目に「なんて なめらか」で社名をイメージさせるという。 「なんて なめらか のフレーズは、NTNのコア技術『トライボロジー』を、一般ユーザーの視点で表現。これまでの固いイメージの英字から、わかりやすいイメージへ。当社の企業理念と照らし合わせ、『新しい技術の創造と新商品の開発を通じ、社会もなめらかにする会社』といったコンセプトで、記憶に残る言葉にした」 同社は1918年、玉軸受の研究製作を主事業とする会社として創業。同社は3月9日、「ドライブシャフトは世界シェア2位、1位はイギリスのGKN。自動車の軸受のほか、新幹線・高速鉄道・民鉄・路面電車などの車両台車か
ニューヨーク国際自動車ショーにおいて、3月24日、マツダの「MX-5」(日本名:ロードスター)が「2016年世界カー・オブ・ザ・イヤー(WCOTY)」とデザイン部門の「世界カーデザイン・オブ・ザ・イヤー(WCDOTY)」を同時受賞という史上初の快挙を成し遂げた。さらにそのおよそ1カ月後の4月22日には生産累計100万台を達成した。なぜマツダ「ロードスター」はこのように世界で愛されるのか、ロードスターの開発現場を徹底取材した。 「世界2冠同時受賞! なぜマツダ『ロードスター』は世界で愛されるのか」の後編。 オープンカーだからこそ人馬一体感を演出できる 四半世紀以上の歴史を経て、ロードスターは幸いなことに、初代の主査平井敏彦、そしてそれを引き継いだ貴島孝雄、そして現在の山本修弘をはじめとしてマツダのエンジニアが一貫して掲げていた開発・製品化のテーマ“人馬一体”が、市場に完全に定着した。動力性能
ニューヨーク国際自動車ショーで、3月24日、マツダの「MX-5」(日本名 ロードスター)が「2016年世界カー・オブ・ザ・イヤー」とデザイン部門の「世界カーデザイン・オブ・ザ・イヤー」を同時受賞という史上初の快挙を成し遂げた。さらにそのおよそ1カ月後の4月22日には生産累計100万台を達成した。なぜマツダ「ロードスター」はこのように世界で愛されるのか、ロードスターの開発現場を徹底取材した。 世界2冠同時受賞は自動車の歴史に残る快挙 3月24日、マツダ・ロードスターがワールド・カー・アウォード(World Car Awards)主宰の自動車賞で、最高の栄誉となる「2016ワールドカー・オブ・ザ・イヤー(WCOTY)」を与えられた。現在米国で開催中のニューヨーク国際オートショーで発表、同時にその授賞式が行われた。ロードスターはこれに加えて「2016ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー(W
マツダのロードスター(2015年5月発売)がこのほど「2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー」(日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会主催)を受賞した。昨年のデミオに続き、2年連続でマツダ車が“最優秀”と評価された。マツダといえば今や、スカイアクティブという独自技術に注目が集まる。しかし、このスカイアクティブを世に浸透させるのには、エンジニアの努力はもちろんのこと、その努力を顧客に浸透させる販売・営業の力も見逃せない。そこには、スカイアクティブを生んだ技術革新と同質の販売革新に取り組む、マツダ独自の挑戦があった。そしてそれは今でももちろん進行形だ。 その実像を知るため、マツダの本社で販売・営業のキーマンに会った。 チームワーク、人材の育成、顧客視点 稲本信秀(当時常務執行役員、現専務執行役員)の呼びかけによって2009年初夏に広島の本社で開始された研究会は、その後約1年間続く。広島や大
「最近のクルマは高いよね」とよく言われる。確かに軽自動車がものによって200万円と聞くと「全くその通り」と思うが、一方、頭の中には「それはちょっと違うんだよなぁ」と思うもう一人の自分がいる。今回は日本人のデフレ慣れとクルマの価格について考えてみたい。 無茶なローンを平気で組んだ30年前の若者 30年前、筆者がホンダ・ディーラーで整備士をやっていたころのことだ。そのディーラーは珍しいことに四輪だけでなく二輪の販売店も持っており、たまたまそこに配属になっていた時期がある。 二輪のお客さんは四輪のお客さんより概して整備の現場が好きである。工場に入り込んで来ては修理作業を眺めていくので、段々親しくなる。ある日、その常連客のUくんが言う。 「池田さん。俺、今度クルマ買うんですよ」 「へぇー、いいじゃない。何にするの?」 「プレリュードが欲しいんすよね」 「おー、金持ちだねぇ」 「いや、そんなんじゃな
日本向けには5月21日に発売となり、同時に納車が開始されたマツダの新型「ロードスター」。1989年5月に米国で初代モデルの販売が開始されてから26年以上もの間、多くのファンに支えられてきたロードスターは、この第4世代モデルでマツダブランドを象徴する車として位置付けられるに至った。 シートを2座しか持たない小型軽量のオープンカーに、自動車メーカーとしてのブランドを象徴する役割を持たせてしまおうというのだから、なかなか大胆だ。しかし、ロードスターのような誰もが選択するわけではないパッケージでありながらクルマ好きなら思わず注目してしまうアイコニックな存在には、大メーカーとは異なるマツダの“生き残り方”が投影されているように思えてくる。 前モデルの2倍以上のスタートダッシュ ND型と呼ばれる今回のロードスターは、2014年9月の世界同時発表会を皮切りに各所で少しずつ情報が解禁され、今年3月30日か
連載趣旨 産業や企業の栄枯盛衰が激しい現代は、技術者にとっても先が読めない時代です。技術開発一筋に生きるのか、管理する側に回るのか、はたまた身に付けた知恵やノウハウを生かして独立するのか――。いずれの道を進むにせよ、否が応でもキャリアというものを考えなければなりません。 モジュラーデザイン(MD)の第一人者である日野三十四氏は、ロータリーエンジンの研究開発技術者としてキャリアをスタートし、技術情報管理や技術標準化に職務をシフトしてMDの研究に従事した後、MDのコンサルタントとして独立しました。キャリアの転機に何が起こり、同氏はどう考えたのか、半生を振り返っていただきました。 日野三十四氏は2017年6月にご逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。 マツダに30年以上勤務し、技術情報管理や技術標準化を推進後、2000年に経営コンサルタントとして独立。韓国の世界的電機メーカーを皮切りに
(前回から読む) 今回も例によってコンビニやファミレスの駐車場でイキナリ知らない人に声をかける、当欄名物“突撃インタビュー”を実施いたしました。詳しいお話は次回の“総集編”でお届けするとして、彼らが異口同音に話していた言葉を先行してご紹介しておきましょう。それは、 「クルマは馬力じゃないんだよね」 というものです。 クルマは馬力じゃない。通っぽい人からそういう台詞はよく伺います。まあそうなのかなぁ……と思います。パワーが弱くてもクルマはソコソコに走る。少ないパワーでも楽しいクルマは幾らでもあります。そしてバランスさえ優れていれば高馬力のクルマをカモることさえ出来る……、とも言われています。 そうはいっても、馬力は大きいに越したことはないのでは? しかし正直な話、私はその感覚がどうもピンと来ていなかった。 何だかんだ言っても、クルマの走りを決定付けるのはやはり馬力ではないのか? 与えられたリ
印刷する メールで送る テキスト HTML 電子書籍 PDF ダウンロード テキスト 電子書籍 PDF クリップした記事をMyページから読むことができます 「モノのインターネット(Internet of Things:IoT)」市場は、急速に拡大している。米IDCは2014年、「世界のIoT市場は、2020年には71兆ドル規模になる」との予測を発表した。実際、海外ではIoTを利用し、既存の既存ビジネスを強化したり、新規ビジネスを立ち上げたりしている企業が目立つ。 IoTはビジネスにどのようなインパクトをもたらすのか。日本IBMソフトウェア事業本部 Analytics事業部 ICP エグゼクティブ ITS-IoT 鈴木徹氏に話を聞いた。 ――IoTでビジネスを活性化する機運が高まっています。既に活用している先端企業では、どのような取り組みをしているのでしょうか。 「ビジネスを変革するIoT」
(承前) グローバル時代には、新興国から先進国まで幅広くカバーする製品展開をできることが勝者の条件だ。だが、従来の経営のやり方のままでは膨大な経営資源を必要とする。そこで、ドイツVolkswagen社(以下、VW)が2007年から本格的に取り組んでいる「Modular Toolkit Strategy」が2010年ごろからにわかに脚光を浴び始めた(第19回参照)。さらに、トヨタ自動車は「Toyota New Global Architecture」(TNGA)を、日産自動車は「日産CMF」(CMFはCommon Module Familyの略)を打ち出した。 トヨタ自動車および日産自動車の発表を聞くと、Modular Toolkit Strategyと異なるように思えるが、狙いは同じ「モジュール化」だと考えている。自動車は「擦り合わせ型製品の典型」といわれるが、擦り合わせとは個別モデル用に
ドイツ政府が描く第4次産業革命 「Industrie 4.0」とは2011年11月に公布された「High-Tech Strategy 2020 Action Plan(高度技術戦略の2020年に向けた実行計画)」というドイツ政府の戦略的施策の1つである。 産官学の共同プロジェクトとして推進され、有識者で構成される「Industrie 4.0 Working Group」と科学技術アカデミー「acatech(National Academy of Science and Engineering)」によってまとめられた素案は、2012年10月2日にベルリンで開催された「Industry-Science Research Alliance’s Implementation Forum」でドイツ政府に対する提言書(PDF)として提出された。 現在では、ドイツにおける電機、通信、機械などの工業会(B
1973年9月3日号より 街のモーター屋から、世界の“ホンダ・モーター”へ。 松下電産、ソニーと並んで、戦後の高度成長期を代表する本田技研工業の野人経営は、常に多くの話題を呼んできた。 本田技研の経営の神髄は何であったか。今秋の退陣を控えた社長本田宗一郎氏に、トップ明け渡しの“野人哲学”と経営の心得を聞いてみた。 (聞き手は本誌編集長、太田 哲夫) * * * 問 25年間、社長をやってこられて、お辞めになる。御心境はいかがですか。 答 私の言行録をごらんになればわかるけど、20年ぐらい前から「ズバリ、一番良い時期をみて辞める。辞める時には家のものには渡しませんよ」と言ってきている。少なくとも、15年間は言ってきてます。 そういうことも言わずに、本田家の商店気分でやったら、うちの若い者は働かんだろうネ。人からみて不思議だ、どうしてあんなことをやるんだろうなと思うことをやってきている
みなさまごきげんよう。フェルディナント・ヤマグチでございます。 しかし参りますね。こうも暑い日が続きますと。 肩の調子は相変わらずで、トレーニングも出来ないので、ひたすら“食っちゃ寝”の怠惰な生活を送っております。夏をこれだけダラダラ過ごすのは5年ぶりくらいのことでしょうか。 何とかせねばなぁ、と気持ちだけは焦るのですが、エントリーした大会にも出られないとなると、モチベーションが湧いてきません。今月末のアイアンマン・ジャパンを目指して頑張って来たのですが……。 と、ここまで書いて、ふと気が付いたのですが、アレ?皆様にはまだお知らせしていませんでしたっけ?いや実はトレーニング中にバイクで転倒して、鎖骨を複雑骨折してしまったのです。 肩なら前にもやっただろう、ですって? ご記憶の良い読者の方は覚えておいでですね。そう、確かに4年前にも同じ左肩をやりました。でもあの時は骨折ではなく、肩鎖関節の脱
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