(廣末登・ノンフィクション作家) 今年の正月三が日、神社の初詣に参拝された方も多いのではないだろうか。正月の除夜の鐘の音は、われわれ日本人の魂に響きわたり、IT化された現代社会にあっても、個々人の内にある日本文化の琴線に触れる何かを刺激するようである。 初詣の参拝は、老いも若きも何がしかの願いを賽銭に込め、投擲後は一心に祈っている。横あいからヒョイと投げ込めばよいものを、寒い中、信心深い人たちは正直に何時間も参道に順番を待っている。願い事といえば、学生は志望校の合格かもしれない。若い男女は、恋路の行方が吉であるように祈っているのだろう。筆者の歳ともなると、賽銭箱の横あいから賽銭を投げ込み、今年も無病息災でモノ書きができるようにと祈るくらいが関の山である。 もうひとつ、正月に参拝する駄賃というか、ささやかな楽しみは、参道の両脇に店を構える露天であろう。筆者なども例に漏れず、一本500円のジャ