その時、私は力の限り走っていた。 私には走らねばならない理由があった。 というのも、先方との約束の時間が、 刻一刻と近づいていたからだ。 なぜこんなに追い詰められて しまったのだろう? それには深い理由がある。 それは昨日の台風が関係する。 台風が過ぎ去り、今日は快晴の空が 見れるかと思いきや、 いまいちパッとしない じめじめした気候だった。 そのため心がぐんにゃりし、 ぐにゃぐにゃしている内に 時間が詰まっていた。 いわゆる不可抗力というやつだろう。 私はひさしぶりに全力で走った。 だが、走っている途中、 道に財布が落ちていた。 時間を優先するなら 無視するのが良いのだろう。 しかし、私の中の強い正義感や、 「ダメだ、もう走れねぇ」という疲労感が、 それを許さなかった。 というわけで、落とし物を交番に届け、 その時の状況だとか、名前やら住所やら 権利放棄の書類を書き、 私は遅刻した。 待